神泉苑から満月を望みました。
今年は10月1日が中秋の名月で、翌2日が満月となりました。神泉苑の観月会は3日に行われましたが、前日の2日夜に境内から月を眺めてきました。神泉苑は平安京造営時に設けられた天皇の禁苑、すなわちプライベートのお庭で、どんな日照りの時にも湧き出る水が枯れることがなかったところから、神聖なる泉の苑池、神泉苑と呼ばれました。そのため、神泉苑は雨乞いの地ともなり、空海と守敏の雨乞い対決や、神泉苑で雨乞いの舞を舞った静御前(源義経に見初められたのはその後の「住吉での雨乞い」とも)など、様々な物語も生んでいます。現在の神泉苑は、二条城のお堀の造営に伴って縮小され、二条城の南にその名残の池が残されています。
池に浮かぶ善女竜王社には真正面からも行けますが、朱色の法成橋に回り込み、願いを一つだけ思いながら渡って善女竜王社に参拝をすれば、願いがかなうとも言われています。神泉苑を象徴する美しい橋で、月を望む光景も絵になりました。
法成橋の西側、本堂の脇には、江戸時代の俳人で画家でもあった与謝蕪村の「名月や 神泉苑の 魚(うお)おとる(躍る)」の句碑が建っています。句の脇には「雨のいのりのむかしをおもいて」と書かれており、蕪村は雨乞いの地としての神泉苑を思っていたことがわかります。現地では、時折魚が池からジャンプして「ドボン」と音を響かせました。これぞ「魚躍る」なのだなぁと、蕪村の句を追体験した気持ちになりました。蕪村の没年は1784年ですが、その4年前に刊行されている都名所図会で神泉苑を見ると、当時は法成橋はありませんでした。神泉苑から望む名月も、やはり時代とともに違っていきます。今年は観月祭には足を伸ばせませんでしたが、一足早く名月を楽しませていただきました。
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吉村 晋弥(よしむら しんや)
京都検定1級に3年連続最高得点で合格(第14回~第16回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。