千本釈迦堂で、3日におかめ福節分会があり、茂山千五郎社中により鬼追いの儀が執り行われました。

千本釈迦堂はお堂の通称で、お寺の正式名は大報恩寺です。かつては200mほど東の千本通まで境内地があったため、千本釈迦堂と呼ばれるようになりました。本堂は鎌倉時代の1227年の建造で、京都市街地で最も古い建物として知られています。

この創建当時からの本堂は「おかめさん」の伝説で知られています。建設の責任者であった大工の棟梁・長井飛騨守高次(ながいひだのかみたかつぐ)は、内陣に四本立てる柱の一本を誤って短く切ってしまいました。困り果てた夫の姿を見かねた妻のおかめさんが、残りの木も短く切って、上に「斗栱(ときょう、ます)」を乗せてはどうかと提案します。

その見事なアイデアで無事に本堂は上棟式を迎えるのですが、そこのおかめさんの姿はありません。実は、おかめさんは妻が助言をしたと知れては世間の恥と考え、自害をしてしまっていたのです。夫の棟梁は、妻への感謝と冥福を祈るため、上棟式の日におかめさんの顔をかたどった面を付けた扇御幣を奉納したといわれています。内助の功の典型ともいえるこのお話、実は賛否両論あり、なぜ死ななくてはいけなかったのか、私を含め現代人では納得しがたい部分があるかもしれません。

それはともかく、おかめさんが助言をして完成したと伝わる内陣の柱とその上の斗栱は、本堂を拝観すると目にすることができます。また本堂向って右手側にはふくよかなお顔をしたおかめさんの像(おかめ塚)があります。おでこは張って智恵を表し、口は小さく余計なことをいわないなど、その表情にも様々なお話があります。また、本堂前の地面まで枝が伸びた地ずりの桜は「おかめ桜」と呼ばれて、春にはおかめさんがお花見をしているかのような美しい光景を見ることができます。少し早咲きの桜で、ソメイヨシノより前に花を開きます。

さて、千本釈迦堂の節分祭は、以上のようなおかめさんのお話にちなんで、なんと鬼をはらうのは、おかめさんです!狂言の茂山千五郎社中の皆様により「鬼追いの儀」として奉納されますが、これが大変面白い。

何が面白いかというと、普通に豆をまいても鬼は退却はしますが退散はしません(笑)豆があるうちは五分五分の攻防、豆が切れると撒き手は鬼にやっつけられてしまう勢い!さあ大変、どうしよう!っという時に登場するのがおかめさん。見事な笑顔を目にした鬼はヘナヘナと腰砕けして改心し、追い払われてしまいます。見事見事。

今年は新型コロナの感染拡大で開催が危ぶまれましたが、やや縮小しながら開催となりました。鬼が退散した後の豆まきは、わずかでしたが。参列者には豆(千本釈迦堂は落花生が恒例)の手渡しがありました。開催して頂けたことに感謝いたします。また例年は、おかめさんの像には着物が着せられ、傘もかけられますが、今年は普段と同じ姿でした。おかめさんの笑顔で鬼が追い払われるというユニークな節分行事。本堂が現在まで残っているのは、あらゆる厄を寄せ付けぬおかめさんの力によるということでしょう。機会がありましたら是非ご覧になってみて下さい。

ガイドのご紹介

京都検定1級に5年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
