京都でも、御池踊や梅小路公園など、各地でく陽光桜(ヨウコウ)が綺麗に咲いています。この桜は、ある人物が平和の象徴の桜として執念で生み出した桜です。

京都では早咲きの桜が場所により見ごろになってきていますが、街路樹にもなっているピンクの濃い桜が「陽光桜」です。天城吉野と寒緋桜を掛け合わせたこの桜は、故高岡正明氏(以下、敬称略)により開発された品種で、2015年にこの陽光桜誕生の物語が映画化されました。

高岡正明は、戦前に青年学校で教鞭をとっていましたが、教え子の戦死の報が次々に届いたことに心をいため、終戦後に新たな桜を創ろうと決心します。高岡の教え子は、亜熱帯から極寒のシベリアまで各地で命を落としていきました。戦地に散った教え子たちに桜を咲かせて見せてあげたいという思いから、寒い環境でも暑い環境でも咲くという一見不可能と思える桜を、高岡正明は求め続けたのです。そして私財を投げ出し、全国を巡って桜を集め、家族の反対もありながら、30年近い苦心の末に大輪で色が濃くて美しく、さらに病気にも厳しい気候にも強い「陽光桜」を生み出したのでした。

「陽光桜」が完成すると、なんと延べ5万本にも及ぶ陽光桜を各地に無償で提供しました。苗の代金はおろか送料さえも貰わなかったそう。実は高岡正明が桜を作った目的は、教え子の供養のためだけではありません。それは「平和の象徴」として各地に植えてもらうことでした。平和の象徴だからこそ、既存の桜ではだめなのだ、新しい品種が必要なのだという強い思いもあったそうです。こうして日本のみならず、世界各国に陽光桜は植えられるようになっていきました。

「陽光」という名前は、天地に恵みを与え世界を平和にする太陽の光から名づけられました。そして日本人の感覚からすると一見派手なその色彩も、外国人に見てもらうならばこれくらい派手でなければという思いから選ばれたそうです。新しい品種を生み出す奇跡の様な確率に、まさに執念でたどり着いた高岡正明。彼の平和への思いは、大輪の桜となってまさに陽光のように各地を照らしています。なお、今回の内容にを書くに当たり「日本さくら交流協会」ホームページに掲載されている愛媛新聞の記事「平和の使者・陽光」を参考にしました(現在はリンク切れ)。

京都では御池通間之町の北側、梅小路公園、東寺の大師堂脇、一条戻り橋の南(西)側、熊野若王子神社の裏山、楊谷寺や乙訓一帯など、各地に植えられています。この時期、ピンクの濃い華やかな大輪の花を見かけたら陽光桜かもしれません。ぜひ、愛でてみてください。

ガイドのご紹介

京都検定1級に5年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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