22日に円山公園を訪れました。夕方には「祇園しだれ桜」が外側の木で見えにくく、個人的には大変残念に思います。

円山公園は明治19年に整備された京都市内最古の公園で、園内中央にそびえる立派なしだれ桜は「祇園しだれ桜」と呼ばれる京都を代表する桜の木。正確には「一重白彼岸枝垂桜」といいます。初代は江戸時代から祇園社の坊舎・宝寿院にあった名木でした。しかし明治の初めに、神仏判然令からの廃仏毀釈で寺がなくなり、桜の木も印鑑の材料とするために伐採の危機に瀕しました。その際に、実業家の明石博高(ひろあきら)が五両で買い取り、生きながらえたという話があります。初代の木は明治から昭和初期にかけて円山公園のシンボルとして親しまれましたが、昭和22年に樹齢220年で枯死してしまいました。

現在の木は昭和24年に植えられた2代目です。戦後を象徴するように、徐々に立派な木へと成長して、新たに京都を代表する桜となりました。一時期、樹勢が衰えましたが、近年は再び美しい花を咲かせてくれています。個人的にも20年前の学生時代から様々な思い出がある桜です。

2代目の桜の周りには、別のしだれ桜の小木が植えられましたが、微妙に性質が違っており例年は開花時期がずれ、いまはこの外側のしだれ桜が見頃です。外側の木は年々大きくなり、2代目の桜を覆い隠すようになってしまったのが大変残念です。正直なところ、外側の木が大きくなりすぎています。

いちおう東側からは2代目の桜を目にすることができますが、夕方には逆光でとても目を向けられません。他の方向からは、すべて手前の木が覆ってしまいます(南側にはカエデの木)。また、これから手前の桜が葉桜になってきた時には、祇園しだれ桜の勇姿を覆い隠すだけの存在になってしまうのも問題です。これでは本末転倒で、このまま祇園しだれ桜の存在感が薄れて行ってしまうのでしょうか。果たしてこれでよいのでしょうか。外側の木も大きくなってきて確かに綺麗ではあり、観光客の目を引いていますが、本当に見せるべき桜は、老いようとも、花や枝が少なくなろうとも、内側の「祇園しだれ桜」であってほしいと感じます。外側の美しい桜は愛でたいとは思いつつも、個人的には残念な気持ちになりながら、公園を後にしました。
【3月25日追記】この日は私が訪れた時間が悪く逆光で祇園しだれ桜が見えませんでしたが、午前~昼過ぎ、そして夜桜では「東側」に限って祇園しだれ桜を眺めることができます。24日夜のライトアップ初日に改めて訪れると闇夜に浮かぶ祇園しだれ桜を眺めることができました。祇園しだれ桜を見たい方は逆光の晴れの夕方を避けて訪れるとよいでしょう。また、周囲のさくらが植えられている理由としては、桜は一本だけ立っているのではなく他の木と共生しているのが自然の状態で、周りの木と根っこが絡み合うことによってより強固なものになるだろうとの意図で植えられているそうです。

ガイドのご紹介

京都検定1級に6年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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4月21日(金)午前・午後 三千院(シャクナゲ)、寂光院
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次回4月12日(水) 20時~ 毎月第2水曜
書かれていらっしゃるとおりです。本来、祇園枝垂れ桜の近くには他の桜を植えるべきではなかったのだと思います。
物理的に難しいのでしょうが外側の桜を移植するなりして、元の景観を取り戻してほしいと思います。
桜守の佐野藤右衛門さんや京都市等への発信も必要かもしれません。
いちおう東側から見せているということのようで、私が訪れた夕方が逆行で何も見えなかったということのようです。このブログの後に頂いた情報では、祇園しだれ桜の周りの桜木は、佐野藤右衛門さんと相談されて植えられたそうで、一本だけ立っているのではなく他の木と共生しているのが自然の状態で、周りの木と根っこが絡み合うことによってより強固なものになるだろうからとの事でした。夜桜は今年もとても綺麗でしたので「晴れの夕方は祇園しだれ桜が見られない」というのが教訓で、午前中から昼過ぎと夜桜の時間帯がオススメということになりそうです。