6月5日夜~6日未明に宇治の県神社(あがたじんじゃ)で県祭りがありました。「暗闇の奇祭」とも呼ばれるお祭りです。
宇治の一年の行事の中でもトップクラスに賑わうのが県祭りです。県神社を中心に宇治橋から宇治駅付近にかけて夜店が立ち並び、周辺の若者が大集合します。2023年は4年ぶりの露店復活とあって、人出は約12万人(宇治市観光協会発表)を数えたそうで、2019年の10万5千人を上回る混雑だったそうです。露店周辺の人の密度は祇園祭の宵山にも匹敵するほど。熱気はものすごいものがあります。
県神社は、木花咲耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)を祭神とする神社で、創建は大和朝廷の時代にさかのぼるともいう古社です。平安時代中ごろに、藤原頼通が平等院を創建した際には鎮守社となりました。社名は祭神の別名である「吾田津姫」に由来するとも、古代の宇治県(あがた)の守護神から来ているともされています。県祭りは「暗闇の奇祭」とも呼ばれ、6日未明に行われる「梵天渡御」がクライマックスです。ただ先述の通り、現代では夜店が大いに賑わいます。
梵天渡御の時間が深夜から未明で、終電が無くなってしまうため、遠方の方が見るためには近隣に宿を取るか、自家用車(レンタカー)などで訪れる必要があります。夜店は夕方から若者が出て大いに賑わいます。そのためか警察官が駅を含め一帯に多数配置されて、ものものしい雰囲気もあります。交通規制には十分ご注意を。梵天渡御のみを見たい方は、夜店が終了する22時以降に訪れるとよいでしょう。県神社での神事は23時半から始まり、梵天が境内の外に出るのは24時の神事からです。
県祭りは「暗闇の奇祭」と呼ばれ、その所以が深夜に行われる「梵天渡御」です。県神社のご祭神であるコノハナサクヤヒメが丸い形の御幣に宿り、そこに梵天と呼ばれる屈強な男が片手でしがみ付いて一体化し、そのまま神輿に担いで進みます(以下、梵天と呼びます)。一般には丸い形の御幣を梵天と呼んでいますが、地元の方は男の方も梵天と呼んでいました。
梵天渡御は本来、宇治神社御旅所から県神社での神遷しを経て宇治神社へ渡御し、県神社へと戻るという経路で行われていましたが、神輿を担いでいた県祭奉賛会と神社との関係がこじれ、近年は県祭奉賛会と神社側とで別々の梵天が巡行するという、分裂状態になっています。今年は県祭奉賛会が梵天渡御の開催を見送り、神社側のみの梵天渡御となりました。神社の梵天渡御は昨年は境内のみでしたが、今年は神社前の交差点で「ぶんまわし」等を行って頂けました。
県祭りは夜店と人出がすごいと書きましたが、それも22時まで。その時間を過ぎると一斉に夜店は撤去され、県神社で神事が始まる23時半過ぎには、あらかた片付け終わり、数時間前の賑わいが信じられないように静かな通りになります(ただ、ゴミが散乱して大いに荒れています)。さて県神社では、23時半からまず梵天の前で神事を行います。人出は密ではありますが、それでも夜店の賑わいに比べればずいぶんと人は少ないです。神事の後、梵天を担いでご神木の周りを3周し、拝殿前に安置します。そして午前0時きっかりに、梵天へと神を遷す神事が境内の電気を全て消して行われます。当然フラッシュも厳禁。ただ何かを行っている様子は、暗闇の中でもうっすらと目では見えています。
神遷しが終わると、いよいよ梵天が担がれて境内を出て行きます。境内の鳥居を出ると、フラッシュでの撮影も解禁です。梵天は境内南西の交差点で「横ぶり」「縦ぶり」「ぶんまわし」を行います。ここが祭りの最大の見せ場で、辺りには地元の方が大勢集まってきていました。横ぶりは梵天を横に勢いよく倒し、縦ぶりは同じく梵天を縦に倒します。そして「ぶんまわし」は、梵天を勢いよく回転させます。かなりの勢いがあるため梵天は回転しながら動いて行きます。カメラに夢中になっていると危険が迫ることもあるのでご注意を。
「ぶんまわし」が最大の見せ場とあって、フラッシュをたいて撮る方も多いです。街灯の明かりもあり暗闇なのは神遷しの時だけでしょう。横ぶり・縦ぶり・ぶんまわしは、やはり大変迫力があります。横ぶりの時には、梵天の先が地面に付くほどにまで傾けている場面もありました。しがみ付いている方は小柄で筋力のある方で、生半可な人間では遠心力で振り落とされてしまいそうな勢いで梵天は振られています。
こうして20分程、梵天が振られて盛り上がったあと、再び梵天が境内に戻されて一旦梵天を当初の場所に戻して神事を行います。そして、休憩時間を挟んだあと、梵天の丸い御幣の部分だけを本殿前(拝殿内)へと運んで、再び神事を行います。梵天の移動の際は境内の灯りが消されフラッシュ撮影は禁止されます。本殿前での神事では、玉ぐしの奉奠やお神酒のふるまい(担ぎ手のみ)、会長の挨拶などもありました。
全ての神事が終了すると、梵天の丸い御幣から紙(幣)が抜き取られ、参列者に授与されました。この紙には縁結びや子授けのご利益があるのだとか。時刻は午前1時過ぎですが、参拝者は多く待機していて、梵天から抜き取られた紙を受け取っていました。私も少し頂きました。祭りの形態は昔とは変わっている部分もあるようですが、この紙(幣)の授与は昔ながらかもしれません。
さて、県祭りの梵天渡御は遅い時間ということもあり見るのは大変ですが、見ごたえはあるお祭りです。今回は動画もありますのでぜひご覧ください。なお、フラッシュが点滅していますのでご注意ください。
ガイドのご紹介
京都検定1級に6年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
【オンラインサロン】吉村晋弥のマニアック京都サロン を募集中!
「まいまい京都」さんで『【オンラインサロン】吉村晋弥のマニアック京都サロン』を募集中。毎月第2水曜日20:00~21:30頃の配信と、月1回程度のサロンメンバー限定ツアーにご参加いただけます(ツアーは別途参加費が必要です)。詳細はリンク先をご覧下さいませ。
散策・講座のお知らせ
- 「過去の講座動画の販売」を再開しました。
- 【講座を受付中!】
【配信講座】京都三大祭 「葵祭」 歴史と見どころを解説!
【配信講座】京都の定番スポット徹底解説 - 【受付中!】
6月8日(木)13時30分~15時30分頃
都七福神の布袋尊、蛇腹天井!異国情緒あふれる中国風の禅寺・萬福寺へ
6月12日(月)13時30分~16時頃
アジサイと緑が彩る真如堂とウサギと猿の像が迎える神社へ
6月20日(火)13時30分~16時頃
涼やかなハンゲショウが彩る両足院と新宝物館の六波羅蜜寺へ
- 【まいまい京都で受付中!】
6月17日(土)09時30分~12時頃
【大原三千院】苔に覆われた“東洋の宝石箱”、金色に輝く国宝三尊を拝観
6月17日(土)13時30分~16時頃
【大原寂光院】平家物語・最後の舞台、大原の奥にたたずむ隠れ里をいく
6月18日(日)09時45分~12時頃
【善峯寺】紫陽花が埋め尽くす天空の山寺、ここでしか会えない絶景
6月18日(日)14時~16時30分頃
【大原野】美仏たたずむ初夏の古寺巡礼、青もみじの世界に包まれる