7月10日に祇園祭の神輿洗式がありました。朝から夜までの諸行事を眺めてきました。
八坂神社の神事では7月10日は神輿洗を中心に様々な行事が続く日です。10時頃から四条大橋界隈で行われたのが、神用水清祓式(しんようすいきよはらえしき)です。雅楽の先導で仲源寺を出発した神職や宮本組ら関係者一行が四条大橋の南側から鴨川へと水桶を垂らして、川の水を汲み上げました。
四条大橋の南側から南の松原橋(旧五条大橋)にかけての鴨川は、この神用水清祓式で水を汲むエリアのため、お宮さんの水を汲む川という意味で「宮川」と呼ばれています。花街の宮川町の名もここから来ています。水を汲み終わると、四条大橋の南東に移動して神用水の前で神職が大祓詞を奏上し、お祓いをしたのち、桶に蓋をされて安置されました。このまま夕方の神輿洗を待つのです。
夜の神輿洗式は四条大橋で行われますが、近年は夕刻から橋の上で立ち止まることはできず、南側は西行一方通行、北側は東行一方通行の規制が入ります。2023年は橋の西側に出れば規制対象外で立ち止まることができ、神輿が到着すると、四条大橋の西詰の道路に出ての観覧が許可されました。ただ、来年以降も同様とは限りませんのでご注意ください。また、松明が目の前にあり見通しが抜群ではなく、神輿に水をかける場所もかなり遠いため、その水にかかることは不可能です。
さて、お迎え提灯行列が京都市役所前での舞踊を終えて戻って来る夕刻、八坂神社では本殿前に掲げられた大松明に「をけら火」が点火されます。この大松明を神輿の担ぎ手たちが肩に乗せて、威勢よく炭を落としながら南門を出て四条通へと進んで行きます。これは神輿が巡行する前に道を清める「道清めの儀」あるいは「道調べの儀」と呼ばれる勇壮な火祭り。祇園祭にはこのような勇ましい行事もいくつかあります。
四条大橋に着いた大松明は橋の真ん中で回され、火の着いた炭が落ちる中、多くの担ぎ手たちが松明を支えていました。最後に動画もありますので、その勇ましい様子をご覧になってみて下さい。
大松明が八坂神社に戻って行きしばらく待つと、いよいよ四条大橋に神輿がやってきます。時刻は20時頃。神輿洗は午前中に四条大橋から汲んだ鴨川の水(神用水)で神輿を清める儀式で、具体的にはスサノオが乗る中御座の神輿1基を四条大橋の上に運んで、汲んだ水を榊につけて神輿に振りかけて行きます。決して鴨川にザブザブと入って文字通り神輿を洗うのではありません。
神用水をかける際に、周りの人々にもかかるように大きく榊を振り、この水にかかると1年間無病息災で過ごせるとされます。ただし、現在は上述の通り、関係者以外はかかるのは不可能に近い状況ですのでご注意ください。
この神輿に水を振りかける所作は、一般的には清めと解されますが、各種神事が終わった28日にも再度同様の神輿洗が行われることから、鴨川の水神を神輿に宿す行為なのではないかという考えもあります。祇園祭は疫病鎮めの祭りですが、河川が氾濫すると衛生状態が悪くなって疫病が流行りやすくなるため、川の神を鎮めるのだという考え方も一理あるでしょう。いずれにしても、古くから伝わる祇園祭の行事のひとつです。
神輿洗が終わると神輿が八坂神社に帰っていきます。実は神輿にも松明が付き添っていて、炭を落としていきます。祇園界隈の方々はこの消し炭を拾い集めて厄除けのお守りとするのが習わしです。八坂神社の西門前(八坂石段下)では、先ほどすれ違ったお迎え提灯行列の子どもたちが、手に手に提灯を持ちながら神輿の戻りをっていて、まさに「おむかえ」といえる光景です。神輿は八坂石段下で差し上げを行った後、お迎え提灯行列の子どもたちとともに南門へと進んで行きます。
境内に神輿が入ると、本殿前で差し上げを行った後、舞殿に安置されました。多くの方が見守る勇ましい一場面です。神輿が納まった後は、南楼門前で鷺踊が奉納され、続いて能舞台で小町踊と祇園祭音頭が披露されます。遅くまで子どもたちが頑張ってくれています。2023年は4年ぶりに例年通りの行事となり、長い一日を私も感動しながら目にすることができました。関係者の皆様もお疲れ様でした。一連の行事の様子は動画にまとめていますので、ぜひご覧ください。
ガイドのご紹介
京都検定1級に6年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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