10月9日に粟田祭の神幸祭が行われ、見事な剣鉾差しや神輿の巡行がありました。
粟田祭は千年の歴史を持つ祭りで、室町時代に祇園祭が催行できなかった年は粟田祭をもって祇園祭の代わりとしたとされるほどです。粟田神社のご祭神は祇園祭を行う八坂神社の神々と同じで、神社の由緒は下記のように伝わっています。平安時代の清和天皇の時、都に疫病が流行った際に、天皇の使いが八坂神社に7日間こもって国家と民の安全を祈祷すると、その7日目の夜、夢の中に老人が立ちました。その老人は「私はオオナムチ(大国主命)である。祇園の東北に牛頭天王にゆかりの地があるので、その地に私を祀れば、必ず国家と民衆は安全である。」と告げて消えました。
そうしたお告げから、粟田神社の社を整備して八坂神社の御祭神で牛頭天王と同一視されたスサノオとその妻・クシナダヒメ、お告げに現れたオオナムチを祀り、厄除けの神として信仰されるようになりました(牛頭天王は疫病を司ると信じられた)。また、粟田神社は八坂神社の旧名・祇園感神院と対応して「感神院新宮」と呼ばれていました。
さて、粟田祭は神幸祭に登場する剣鉾が知られています。剣鉾は高さが7m~8m、重さ数十㎏で、重心が上にあるため持ちあげるのも非常に難しく、まさに名人芸。剣の下部には鈴(りん)と呼ばれる鈴が付いており、鉾を揺らすことで澄んだ音が響き渡ります。
剣鉾は厄払いのための道具で、道筋を祓い清め悪霊を鎮める祭具。神輿に先立って進むことで、神輿の巡行路が清められていきます。剣鉾が連なって進み、音を響かせる様子は見応えがあります。中には女性の差し手もおられたようでした。今年も目にすることができ感謝です。
剣鉾のある神幸列が過ぎると神輿もやってきます、粟田祭の神輿は見せ場が多いのが特徴。ひとつは粟田神社から坂を下りてくる場面。坂の上からは神輿のブレーキの役割を持つ綱も引っ張られますが、この綱は一般の方も握ることができます。
無事に下りた神輿はしばらくの休憩の後、出発していきました。今回は見ていませんが、青蓮院での読経など巡行途中でも見応えのある場面があります。いずれにしても、神輿が威勢よく進む様子に、コロナ禍を過ぎて祭りは例年の姿に戻ってきているのを感じました。
ガイドのご紹介
京都検定1級に6年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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