東山仁王門の交差点を東へ入ったところに本妙寺があります。普段は静かなお寺ですが、12月14日は赤穂義士の寺として賑わいます。
本妙寺は、基本的に赤穂浪士が討ち入りを果たした12月14日に脚光を浴びるお寺さんです。今年も「四十七士記念義士祭」が行われて、義士の木像が置かれた宝物館(義士堂)の公開、琵琶の奉納、蕎麦の振る舞い(有料)、四十七士の貝賀弥左衛門らの石碑などが公開されました。
本妙寺は、日蓮宗のお寺で、鎌倉時代末期に日像が岩倉に創建したのが始まりです。その後、中絶を経て戦国末期に復興。江戸時代、京都三大大火のひとつである宝永の大火後に、現在地に移転してきました。本妙寺は貝賀弥左衛門が自らの菩提寺と定めていたのですが、懇意の中であった京の綿屋善右衛門という赤穂藩の御用商人に、妻子の行く末を頼みました。討ち入り後、綿屋善右衛門は貝賀弥左衛門の生前の思いに従って、貝賀弥左衛門とその妻、弥左衛門の兄とその子どもの4名を祀る石碑を本妙寺に建立したのです。ただ、その石碑も老朽化が進んだため、平成5年に改修復元された石碑がお墓には立っています。
この綿屋善右衛門は、実際に赤穂浪士を支援した人物で、貝賀弥左衛門には115両もの大金を貸した記録が残されています。赤穂浪士を支援した商人といえば天野屋利兵衛が有名ですが、これは史実とは異なり、実際には天野屋利兵衛は赤穂藩とは関係がないそう。綿屋善右衛門こそが実際に支援をした商人として真っ先に名前が挙がるべき存在なのかもしれません。
さて、琵琶の奉納は日本琵琶楽協会関西支部の主催によって行われ、曲数も多く、赤穂浪士にちなむものが本格的に披露されます。普段、琵琶の演奏を聴く機会は稀ですが、強弱緩急をつけて見事に物語を弾き語る様は、かつての琵琶法師もこのようであったかと思わせてくれるほどでした。
義士堂の四十七士の木像は、貝賀の子孫九代目の斎藤トラという人が昭和5年に義士の遺品や遺墨を本妙寺に奉納したので、その機会に義士堂(宝物館)が作られ奉納されたのだそう。像はいずれも小型ながら堂々たる風格を持ち、四十七士が居並ぶ様は迫力がありました。宝物館では、他にも四十七士の書などが公開されていました。また、貝賀弥左衛門らの改修前の石碑も宝物館の片隅に置かれています。
境内で振る舞われていた蕎麦は、義士が討ち入り前に食べたという討ち入り蕎麦にちなんでいるのでしょう。私も一杯いただきましたが、美味でした。年に一度、多くの方で賑わうお寺が本妙寺。京都にはこうしたお寺もあります。
ガイドのご紹介
京都検定1級に6年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
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