1月16日に上賀茂神社で武射神事(むしゃじんじ)が行われました。
武射神事は、宮中の建礼門前で射礼(じゃらい)の儀として行われていた魔除け神事を由来としています。やがて社会全体の厄除けも願い、近年は武技奨励の行事としても行われ、上賀茂神社では昭和10年ころから再興されているそうです。
本殿での神事の後、まず蟇目(ひきめ)の儀が行われます。ここで射るのは鏑矢(かぶらや)で、射ると「ポー」という独特の音がします。鏑矢といえば思い出すのは平家物語に出てくる那須与一。彼が射る場面は「ひやうど放つ(”ひょう”と放った)」と表現されています。かの時代から同じ音なのかもしれません。実際にどのような音かは動画もありますので、ご覧ください。
この「ひきめ」の由来は、鏑矢の音がヒキガエル(蟇蛙)の鳴き声に似ているからだとか、あるいは音を出すために鏑矢に開いている穴がヒキガエルの目に似ているからだともいわれています。この神事では、射る前に的に魔性のものを集める言葉を唱え、鏑矢を射て退散させます。続いて的を設置し、神職が丹塗りの矢でそれを射ます。的の裏には「鬼」の文字が書かれており、災いの象徴である「鬼」を的に射るのです。
的まではおよそ40mあり、普段から弓道を行っていないものが当てるのは難しい距離だそうですが、「当たらないと縁起が悪いのでは」ということで、神職の方はちゃんと練習をされておられるそうです。見事に的を射抜いて行かれたのは、練習の成果なのでしょう。
続いて、弓馬術礼法小笠原流・近畿菱友会(りょうゆうかい)の皆様により、2組に分かれて百手式(百々手式・ももてしき)が行われました。的は変えられ、裏には「鬼」の字も書かれていますが、こちらは逆さまになり、角の部分が無くなっています。鬼の字を逆さにするのは京都の行事では目にした記憶がなく、調べてみると関東の行事で行われている風習のようです。他のブログやニュース記事の記載では、逆さにするのは鬼の角を取り逆さ磔(はりつけ)にする意味があるとか、悪霊を退散させるためとか、古来からの風習でよくわからないなどの理由が出てきました。
人数編成や組の数は年によって異なります。百手式では、二本の矢で一手と数え、これを10人で10回行うことで百手となるのですが、ここではその形式にのっとって行われ、実際に「百手」までは射ません。
最初に式の開始が宣言されます。その後、最初の組(前弓)が出て、一同が同じ所作で準備を行います。これら全てに作法があり、組によっても異なっている部分があるようです。弓は一人づつ数秒ほどずらして放って行きます。さすが、ほとんどの矢が的に当たります。ただ、普段は自分のリズムで矢を射られますが、ここではタイミングを合わせて射らなければならないため、結構難しいそうです。こうして見事な技を見せて頂き、今年も無事に武射神事は終了しました。新年の弓の行事、機会がありましたらご覧になってみて下さい。
ガイドのご紹介
京都検定1級に6年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
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