久しぶりに目にした乙訓寺の牡丹

今年は乙訓寺(おとくにでら)の牡丹を、久しぶりに目にすることができました。

乙訓寺

乙訓寺(おとくにでら)の牡丹を久しぶりに目にできました。乙訓寺が牡丹の寺となったのは、昭和9年の室戸台風をきっかけとしています。京都の過去130年以上の観測史の中で最も強い風を吹かせた、昭和9年の室戸台風。かつての乙訓寺は、松並木が美しい寺として知られていましたが、室戸台風の暴風によって松はほとんどが倒れてしまいました。

乙訓寺

その無残な境内を目にして心を痛めたのが、乙訓寺の本山である奈良の長谷寺の当時の住職。この時、長谷寺から2株の牡丹の花が乙訓寺に贈られました。その後、歴代住職らの尽力によって株数が増え、かつては2000株ともいう花が境内を彩って、京都で牡丹といえば乙訓寺の名前が第一に挙がるほどにまでなりました。

乙訓寺

しかし近年は天候不順などによる生育不良やコロナ禍もあって「牡丹まつり」が行われず、2024年は5年ぶりの開催となりました。以前よりは花の数が少なくなり、鉢植えの牡丹もありましたが、その花は「花の王」にふさわしい気品あふれる姿を見せてくれました。一部の花には日除けと雨除けで白い番傘がさされているのも以前と同じで、新緑ともよく似合っています。牡丹まつりはすでに終了しましたが、まだしばらく牡丹の花を目にできるでしょう。

乙訓寺

乙訓寺は歴史や仏像の面でも面白く、実は乙訓寺は今は多くが消えてしまった古代寺院が現代に存続しているお寺です。空海と最澄の出会い、桓武天皇の弟にして悲劇の皇族・早良親王の供養塔、合体大師という特異な本尊に秘められた物語など話のタネは多く、緑の時期や秋の紅葉は隠れ名所だと思います。

乙訓寺

2023年6月には「木造十一面観音立像」が国の重要文化財に指定されました。鎌倉時代に1日間で刻まれたことが判明し、明らかな例としては全国3例目という貴重な一日造立仏で、この春は4月27日~5月6日で公開されます(1000円)。さらに乙訓寺で公開されるもう一体の重要文化財は、物憂げなその表情から「幽愁の毘沙門天」と称される平安時代の仏様。令和4年度に保存修理を受けた、吉村おすすめの仏像です。

乙訓寺

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に7年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。

散策・講座のお知らせ

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5月11日(土)13時30分~16時頃
新スポット誕生!新緑が輝く建仁寺の西来院+三条駅界隈へ
5月14日(火)13時30分~16時頃
門跡寺院の妙法院!五月会の堂内特別公開へ!
5月15日(水)9時半~12時頃
御苑周辺で眺める優美な「葵祭」 吉村とっておきの見学場所へ

【講座を受付中!】
奥深い京都へのいざない!マニアック京都講座
その8 「ゴールデンウィークの京都を楽しむ」

4月24日(水)14時~16時、18時半~20時半頃
4月28日(日)18時~20時頃
5月:京都 惟喬親王ゆかりの地、6月:愛宕神社と愛宕山

【散策受付予定】
5月28日(火)午後 → 行き先未定

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