先日ご紹介した、上賀茂神社と伏見稲荷大社以外の社寺でも初詣は大いに賑わっていました。
まずは八坂神社。京都で2番目の約100万人の参拝者が正月三が日に訪れる神社です。ご祭神のスサノヲノミコトは、あらゆる災いの象徴であるヤマタノオロチを退治した厄除けの神様。新年の無事を願って参拝するにはよい神社ですね。観光的にも京都では非常に名の知れた神社ですので、若者を中心に賑わっています。写真は2日の日中の様子ですが、これでも屋台の方によると例年より少ないのだとか。
京都市にある273社に参拝をしたのと同じご利益を授かれるという、なんともありがたい神社が平安神宮。伏見稲荷も上賀茂神社も八坂神社も北野天満宮も、全て京都市にありますので、ともかく平安神宮に参拝すれば大丈夫!という少々乱暴な考え方も出来てしまいますが、いずれにしても京都を代表する神社として大いに賑わっています。拝殿は入場制限もできるほどで、おみくじにも行列ができていました。神宮の周辺は正月三が日は歩行者天国にもなっています。
学問の神として有名なのが北野天満宮。受験生を中心にこちらも大賑わいです。2日からは、天満書(てんまがき)が絵馬堂で行われ、小学生たちが天神さんの境内で書き初めを行い、書道の上達を願います。ご祭神の菅原道真は書道の神ともされているためです。事実として、道真は和歌と漢詩に優れた人物として名高いのですが、実はその確実な筆跡はよく分かっておらず、字が上手かったかは定かではありません。学問の神である以上、字が上手かったはずだという人びとの願いが生み出した信仰かもしれません。
一方、お寺では清水寺にも多くの人が訪れていました。その人出は、紅葉シーズンのピークに匹敵します。平安の昔から篤い信仰を集めて来た十一面千手観音に、新年の安泰を願うのも京都らしいですね。本堂には立派な花餅も奉納されていました。おみくじで混み合う本堂を抜けると、縁結びの地主神社もあり、若者を中心に賑わっていました。
また、正月三が日のみ公開されていたのが、椿寺で知られる地蔵院のご本尊、五劫思惟(ごこうしゆい)阿弥陀如来像です。「劫」とは非常に長い時間の単位で、一説には1辺20km四方の石の塊に3年に一度天女が舞い降りて羽衣(はごろも)で撫で、その石の塊がすり減って無くなるまでの時間を「一劫」とします。となると五劫とはとんでもなく長い時間。つまり、それほどの長い時間、私たちをどうやって救おうかを考え続けたため、髪も伸びたと言うわけです。ちなみに「じゅげむじゅげむ~」に出てくる「五劫のすりきれ」もこの「劫」のことで、それどころか億劫(おっくう)という言葉まであります。一劫ですらものすごい時間なのに、「億」劫とはたいへんです。
地蔵院の五劫思惟阿弥陀如来像は、アフロ型の髪形もさることながら、ふくよかなそのお顔が非常に印象的でした。俗に「お多福阿弥陀」とも呼ばれているのも納得です。阿弥陀如来はふくよかな顔つきで表現されることが多いですが、その若かりし日(宝蔵菩薩)は、さらにふくよかだったということでしょうか。賑わう社寺とは異なり、新年に静かに向き合える仏様です。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。