今回も過去の行事の紹介です。崇仁学区は京都駅の西にあり、崇仁春まつりが毎年5月の第二土曜日と日曜日に行われています。注目は「船鉾」の巡行で、地域一帯をお囃子や子ども用の曳き山とともに進んで行きます。歴史的に崇仁地域は様々な話がありますが、あえてここではふれません。崇仁地域は新日吉神宮の氏子圏に入り、崇仁春まつりのルーツも神社の祭礼への参加にさかのぼります。
天保10(1839)年に現在の崇仁南部の銭座跡村の支配人らが、新日吉神宮や神社を管理する妙法院などに、お迎えの提灯を飾るのは祭りの当日だけ、村内限りを巡行し決して他に持ち出さないので祭りへの参加を認めてほしいと嘆願。以後、参加が認められました。余談ですが、銭座跡村というのは、江戸時代に宝永通宝を作った銭座の跡地に開かれた村のこと。土地には銅が多く含まれて耕作には適さず、長らく放置されていましたが、北部地区の人口増加に伴って江戸時代の後期に新たに開拓されました。当時は相応の苦労もあったと想像できます。
さて、祭りの最盛期には船鉾2基、だんじり(十二灯)4基を数え、新日吉神宮の神幸祭にあわせて勇壮に巡行が行われていました。しかし、第二次大戦後に人口が減少し、さらに鉾も老朽化したため、昭和30年代を最後に祭礼への参加が中止となってしまいました。その後、平成に入って地域の歴史文化の保存に対する機運が高まり、平成10年より祭りが「崇仁春まつり」として復活しました。船鉾や十二灯は、かつて使用されていた木彫や金工品などを利用して復原したそうです。
私も一度見てみたいと思いながら長らく予定が合いませんでしたが、今年はようやく目にすることができました。船鉾はなかなか立派で、祇園祭の船鉾さながら。鉾の屋根に千成瓢箪が乗っているのは新日吉神宮と豊国神社の関係を思わせます。鉾上には子どもたちが乗って軽快に鐘を叩き、大人たちが綱を引っ張って進んで行きます。曳き手はボランティアの手も借りているそうです。
それにしても、想像していた以上に立派で感動しました。祭りへの地域の人々への思いを感じ、往時はさぞ盛大だったろうことが偲ばれます。もちろん今でも立派な行列で、船鉾に加えて子どもたち用の小型の曳き山も出ていました。子どもたちは元気いっぱいです。実は私が見たのは午前中の船鉾の巡行で、十二灯(曳山)は塩小路河原町の交差点に置かれていましたが、午後からは十二灯と併せて、さらに華やかな巡行も行われたようです。現在に甦った立派な祭りに京都の歴史を感じました。また予定が合えば、来年以降も見に訪れたいと思います。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。