東福寺の塔頭、霊雲院は東福寺の中でも最も静かにお庭が見られる場所でしょう。
個人的にも好きなお庭で、ときどき訪れては静かなお庭を眺めています。東福寺には常時拝観できる場所がいくつもありますが、中でもこの霊雲院は最も人が少ない場所だと思います。時には他に誰もいない空間で、静寂の中に聞こえてくる音に耳を傾けることができます。お庭は、九山八海の庭と臥雲の庭が繋がりながら配置されていて、写真の印象よりもずっと広がりのあるお庭。室内から眺めてもよし、縁側から眺めるのもよし。
中央の石は「遺愛石」と呼ばれています。霊雲院第七世の住職であった湘雪は熊本の出身で、藩主の細川忠利と子の光尚は湘雪に深く帰依していました。湘雪が霊雲院の住職になる際に細川家は五百石を送ろうとしますが、和尚は禄が高いのは禅の修行に邪魔だとして辞退し、代わりに「庭上の貴石」を賜って寺宝としたいと申し出ます。それがこの遺愛石。台座もその時に送られたものとのこと。
その後荒れていたお庭も、昭和の時代に重森三玲によって再整備されました。
霊雲院は、日露戦争の時にはロシア人の捕虜の収容所ともなった場所で、ゆかりの品や写真が残されています。
ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから。
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