粟田祭の大燈呂 京都のねぶた


9日は10月の第二日曜日で、京都各地で様々な行事が目白押し。どこもおすすめで、行き先には迷ってしまうことでしょう。夜には粟田神社粟田祭で、京都のねぶたと言うべき大燈呂(だいとうろう)が練り歩きました。行列の様子は動画もありますので、ページの最後に載せておきます。

9日の行事と大徳寺・曝涼展

この日は主だったものでは、大徳寺の寺宝を虫干しも兼ねて公開する曝涼(ばくりょう)展、西院春日神社の春日祭の巡行、安井金毘羅宮でも行列が出て、他にもユニークな相撲が奉納される平岡八幡宮や、伏見の御香宮でも神輿渡御が行われています。またライトアップや特別公開、小さな行事も入れると恐ろしいほど見どころ満載の一日。この日を狙って京都に来られる方はかなり「通」ではないかと思います。

私は大徳寺と春日祭、夜の粟田祭へと行きました。大徳寺曝涼展の見どころは普段は非公開の本坊の内部に入れ唐門等が見られることもありますが、やはりその寺宝。国宝の観音猿鶴図は牧谿(もっけい)の傑作で、私は数年前に初めて目にし鳥肌が立ちました。作品自体は京都検定の学習で知識として知ってはいたものの、実物の迫力はまずもって言葉にしがたいものがありました(個人の感想です)。

今年はもう一度見たくなり行ってみましたが、やはり同じように鳥肌が立ちました。虫干しのすごいところは、通常の博物館などであれば間違いなく厳重に管理されているべきものが、いとも簡単に触れられそうな距離(実際には絶対にさわってはいけません)にあることです。もしよからぬことを考える輩がいたら…などど考えると恐ろしくなるほどに「国の宝」を目の前で、本当に目の前で見ることができます。京都では5月の神護寺で公開される「伝・源頼朝像」を始め、虫干しの機会を設けているお寺がいくつかありますので、ガラス越しではなく直に目で見たいという方は狙っていかれるのもよいかと思います。ちなみに大徳寺の曝涼は1300円。拝観料としては高いですが、好きな方にはそれでも安いかもしれません。ただ、雨の日には中止になることもありますのでご注意ください。

粟田祭の「れいけん祭」

大徳寺で塔頭巡りをした後は春日祭を経て、粟田祭へと向いました。なお、春日祭の様子は次回にブログに載せようと思います。すでに瓜生石(うりゅうせき)の前では「れいけん祭」が始まっていました。瓜生石は知恩院ができる前からあると言われている石で、八坂神社の牛頭天王が降臨して一夜のうちに石の上に瓜が生えたとされています。また、二条城への抜け道だとか、隕石ではないかという説もある不思議な石。粟田神社は、その石から生えた瓜を安置した場所に建てられたとされることから、ここで儀式が行われます。

この儀式、恐らく皆さんが想像される以上に現代の私たちには不思議な行事。神仏習合とはまさにこのことで、粟田神社と知恩院との合同行事です。お神楽や祝詞が聞こえたかと思えば、南無阿弥陀仏とお念仏も高らかに響き、お坊さんが玉ぐしを奉納し、榊を持った神職の後にお坊さんが続いて歩きます。氏子さんたちも大勢で瓜生石の周りを歩く場面もあります。

粟田祭の大燈呂

さて、お待ちかねの京都のねぶたの話です。粟田祭は千年の歴史を持つお祭りで、室町時代には祇園祭が催行できない際はこのお祭りをもって代わりとしたとされるほどの由緒があります。その中で、夜渡り神事で巡行する大燈呂(だいとうろう)は約180年前に途絶えましたが、3年前の2008年に京都造形芸術大学の協力で復活しました。学生たちが青森のねぶたをイメージして作った灯籠があまりに見事であったため、神社が依頼をして作成したそうです。復活に際しては古文書を調べ、氏子への聞き取り調査も行って燈籠のテーマを決めるなどされたそうで、目に見えない苦労もあったことでしょう。

しかしそのおかげで、こうして素晴らしい京都のねぶたを眺めることができます。印象的なのは、各鉾町が拍手で出迎えていること。夜風も冷たくなる時期ですが、そんなことはものともせず皆さん大歓声で迎えています。数年先には見物客もどんどん増えて、秋の風物詩となるのではないでしょうか。青森のねぶたとこちらの大燈呂、どちらが先かという議論もあるようです。ただ、粟田神社が青森ねぶたのルーツであるとする確固たる史料はなく、また現在の大燈呂は青森のねぶたをモチーフにしていますので似て当然で、途絶える前の粟田神社ものとはどれほど似通っているかはわかりません。

それぞれの燈籠は、一部が動くように作られています。非常によくできていますので、じっくり動くまで眺めてみるのも面白いでしょう。また、青蓮院のクスノキは難所で、大きな燈籠は引っかかっていました。木に注意をしたり電線に引っ掛からないように上げたりする人もいました。また、ウェスティン都ホテルの駐車場にも小さな燈籠は入って行き、宿泊者を楽しませていました。燈籠は同じモチーフでも昨年とは違っているようで、作り直されていたり改良されているようです。こうして代々の学生さんの中でも、歴史や伝統が積み上げられていくのでしょう。なお、粟田祭は10日も剣鉾差しなどの妙技が披露されます。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから

より大きな地図で 瓜生石 を表示

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP