11月の記録的な高温と特異日


11月になりました。専門天気図がすごいことになっています。

まだ終わらない「夏」

少し専門的ですが、上空約5500m(500hPa)の高層天気図を見ると、一般的に太平洋高気圧の目安とされるライン(5880gpm)が日本のすぐ南に広がり、一部は九州や四国にかかろうかというところ。これはこの時期としては記録的なことなのです。さすがにもう太陽が傾いているので真夏のような暑さにはなりませんが、それでも例えば京都では25℃を越える「夏日」となる予想が出ています。

京都の過去の記録を調べると、11月で25℃を超えれば2000年以来11年ぶりのこと。もし26℃を超えれば過去132年の中で11月としては5本の指に入る高温です。ただ、最高記録は1923年の26.9℃で、上には上があるものですね。また、最低気温では11月で17℃を下まわらないと、過去132年で10位以内に入ってきます。3日発表の予報では、4日と5日の予想最高気温は25℃、5日と6日の予想最低気温は17℃で、まさに記録的な数字。小春日和どころか小夏日和と言えそうですね。

11月3日は晴れの特異日?

また、11月3日は「晴れの特異日」といわれ様々な野外イベントが開催されやすい傾向にあるようです。テレビの気象予報士の解説でもこの特異日が取りあげられることがありますが、私は「特異日」の否定派。よい機会ですので、特異日の問題点を挙げておきます。

まず、統計期間や場所(地点)によって結果が異なること。過去20年、過去30年、過去50年、過去100年などいくつかの統計期間が考えられますが、それぞれで特異日の結果が異なることがしばしばです。なので「晴れの特異日」というような場合は、統計期間を示すのが誠実かと思います。逆に言えば「今日は晴れの特異日」と言いたいがために、解説に都合のよい統計期間を選択することも出来てしまいます。次に観測地点の問題。「日本全国が晴れ」ということは滅多になく、場所によって雨もあれば晴れもあるのが普通です。となると、当然に統計結果も場所によって異なってきます。つまり、特異日の解説には「どこで?」という情報も伝えるのがさらに誠実でしょう。

さらにはカウント方法。「晴れとは何か?」「雨とは何か?」定義があいまいです。多くは気象台が観測している天気概況を元にしているようですが、夜に雨が降っても雨とカウントされないのか?曇が厚くて今にも降り出しそうであっても結果的に降らなければ晴れにカウントされるのか?いまいち不明確です。
とどめに、一般的に特異日とされる日であっても、他の日と比べてずば抜けていることは滅多にありません。具体的には、20年間の統計、日中に雨が降らなければ晴れ、といった定義で京都の晴天率を見ると、晴れの特異日と言えるのは「20年中19年で雨が降らない、晴天率95%」程度の日で、年間約2日程度。これが1ランク下がって「18年で雨が降らない、晴天率90%」になるとさらに日数が増えます。とすれば、もし今年この晴天率95%の日に雨が降ってしまうと、とたんに晴れの特異日から陥落してしまう恐れがあります。
本当に11月3日が晴れやすいのか?もちろんそれを裏付ける統計資料があることも知っています。しかし、事実2011年11月3日、九州や四国、近畿南部では雨が降っていますね。特異日にこだわるのはまさに占いの類で、それだけで当たれば天気予報など要らないということになります。あくまで「気休め」程度のものでしょう。

以上、否定要素ばかり並べてしまいましたが、肯定要素も無くはありません。「特定の日」としての天気に不安定さがあるならば、1週間単位のようにある程度の日数をまとめた「期間」とすれば、年々の変動が平均化されて天気傾向の本質が見えてきます。期間で見ると、11月初めの今の時期は際立って晴れやすいとは言い難い。むしろ1年の中で最も晴れやすいのは、京都でいえば真夏の8月が圧倒的だと言えるでしょう。また、一般的に現在の時期は低気圧や高気圧が交互に通り、周期変化しやすいことも見えてくるでしょう。
余談ですが、低気圧や気圧の谷の標準的な東西幅は約1000km、移動性高気圧は同じく約2500kmくらい。その移動速度は1日に約1000km程なので、周期は約3.5日。倍にすれば約7日周期となります。週末に決まって雨が降る、というのは移動性高気圧のやってくる時期が多いかもしれません(そうとも限らない時もありますが)。期間で捉えることで、特異日のような”博打”ではなく、きちんとした気象的な裏付けで予定を考えることもできるのではと思います。

今年は、例年とは異なり南の高気圧が強く、今週いっぱいは記録的な暑さとなりそうです。気温差も大きいので体調を崩されぬようお気をつけください。また、沿岸部を中心に大雨にもまだまだ警戒が必要です。今の時期は、陸と海との寒暖差が大きくなって局地的な沿岸前線が形成されやすく、昨日は奄美で140mm/hを超える記録的な雨も降りました。猛烈な雨の定義は80mm/h以上ですので、その1.75倍という想像しがたい豪雨です。このような大雨は予想が難しく、涼しくなっても雨の降り方には十分ご注意ください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから

「11月の記録的な高温と特異日」への1件のフィードバック

  1. 九州や四国、近畿南部で雨が降ってても、東京地方は晴れの特異日という事で良いのでは?

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