下鴨神社 糺の森の紅葉


下鴨神社の糺の森の紅葉が見ごろを迎えています。

積もらなかった京都市街地

まず最初に本日(17日)の天気。市街地では雪は全くと言っていいほど積もりませんでした。大原でも、うっすら積もった程度。昨日(16日)夕方発表の気象台の情報では「平野部の多いところで24時間降雪量は1cm」ですので、積もらない可能性も十分に示唆されていますが、雪マークをドンと出している以上、一般的な受け手の当たり外れの感覚でいえば、外れといわれる部類でしょう。「天気予報はギャンブルだ」と、気象会社に勤めていた頃に先輩が言っていましたが、天気予報は確率論であり、こういうこともあります。が、朝早く起きて雪の京都を、と行動を起こされた方には申し訳ないことでした。特に雪の予報は難しい。当日夜の予報でも、今回のように空ぶることがあり得る一方で、降った際の社会的影響は大きく、予報を出す側のプレッシャーは強い。

では、どう伝えるべきか。意見は多々あるとは思いますが、私はできるだけ予報誤差をきちんと伝えることが情報価値として大切だと考えています。天気予報は「不確実性を伴う、意思決定支援情報」です。予報士や気象台の思考(予報シナリオ)とその不確実性を可能な限り共有することで、利用者側も心づもりができることが増えるのだと、私は実務経験上感じています。もっとも、諸先輩方からは「予報は言い切るべき」という話も多く教わりました。天気予報は、未だ100%科学的に作られてはいないもの。むしろこれほど、毎回毎回の判断が人間臭いものは他に無いのではないかと思います。京都地方気象台も昨日(16日)の22時で臨時に予報を更新していました。そこには17時発表の予報のままではいけないという、雪予報に対する何かしらの意図があったのでしょう。予報哲学は追及していくと深いものがあります。

次回京都で雪が降りそうなタイミングは、来週末の23日から。このところ週末寒波が続いています。雪が積もれば狙っているポイントもいくつかありますので、写真でお届けできたら嬉しいですね。

糺の森の紅葉

さて、この時期にまだ紅葉が!?と思われる方もおられるかもしれませんが、京都の紅葉は、およそ1か月にわたり楽しむことができます。桜も同様で、早咲きから遅咲きまでを1か月は楽しめます。1年の中で2か月間も、春と秋のメインイベントを楽しめるとは贅沢すぎる話です。しかし一般的なガイドブックを見るだけでは、今の時期にどこの場所が最適かという情報を得るのは難しく、それは各ポイントの進行具合を肌で知っている地元のガイドが圧倒的に強い。これも地元ガイドの存在価値の一つでしょう。

さて、下鴨神社の糺の森。まず「糺」の字が初めてだと読めないかもしれません。「ただす」と読みます。この難しい漢字や読みの由来は諸説ありますが、ただすは只洲とも書き、ただ(あるがまま)の中州という意味からきているとする説が一つです。この付近は、賀茂川と高野川が合流する場所で、その間は河川氾濫などにより土砂が蓄積しやすい場所。賀茂川は土砂を流す力が旺盛で、かつて角倉了以は大堰川と同様に鴨川も採掘をして船を通す予定だったのが、掘ってもすぐに土砂で埋まってしまうため、その横に別に高瀬川を掘ったほどです。また、出町柳にある萩の寺・常林寺などの三つの寺は「砂川の三軒寺」と呼ばれ、かつて付近の砂地を流れていた砂川のほとりにありました。

このように二つの河川の合流部は、水がよどんで土砂がたまりやすい場所だったのでしょう。「ただす」の音は只洲から発生し、そこから神の聖地として偽りを糺(ただす)の字があてられたというのも説得力がある。新古今和歌集には「いつわりを糺の森のゆふだすき 掛けつつ誓え 我を思わば」という歌もあり、源氏物語でも光源氏が都を退去する際に糺の森を詠んでいます。また、下鴨神社の祭神・賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)は、この森で民衆の争いを聞きただし、解決を図ったともされています。現在の森のすぐ隣、かつては森だった場所には、意図してか偶然か家庭裁判所があるのも面白いですね。

かつては偽りを糺す場所だと考えられたこの森は、落葉樹が非常に多く、この時期にはふかふかの落ち葉を踏みしめて歩くことができます。木々の種類は40種、数は4700本とも言われその生態は紀元前3世紀ごろの山代原野の原生樹林と同じ植生だとされています。森には古くは弥生時代の遺跡が発掘によって見つかっており、歴史の古さは折紙つき。そんな場所を今では気軽に散策できるとは、本当にありがたいことです。

さて、紅葉はそのような落葉樹の木々の間にあるため日当たりが悪く、その分色付きは市街地で最も遅いといわれています。なんといっても美しいのは、木漏れ日に輝くその姿。神聖な感覚を与えてくれ、古の人々もこのような光景から偽りを糺すと感じたのだろうかと想像が膨らみます。糺の森の紅葉は、今しばらく見ごろが続くでしょう。京都最後の紅葉をお楽しみください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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