冠雪の比叡山 都の富士


12日は次第に雲が晴れ、美しい冠雪の比叡山が姿を現しました。円通寺など洛北の借景庭園からの比叡山の眺めは都の富士とも呼ばれています。

比叡山を見に行く前には、雪化粧の金閣寺へといっていました。そちらの大変美しい様子は前回のブログをご覧ください。この日は、雪の逆さ金閣だけでなく、次第に雲がはれると読んで雪の比叡山も狙っていました。12日の朝は気温が低く、比叡山の雪も多少の日差しを浴びても消えないと考えていました。まさに絶好の比叡山びよりになるはず。

ということで、街中の雪は溶けつつありましたが、さらに京都の北部へと向かいます。鷹峯の源光庵へもダメもとで行ってみました。日向の雪は多くが溶けていましたが、四角い「迷いの窓」からは角度によって雪景色を切り取ることもできました。光悦寺では参道が日陰のため結構雪が残っています。常照寺の参道は日向のため雪は全く消えていました。

さて、洛北には三つの比叡山の借景を臨める場所があります。比叡山からの距離が遠い順から正伝寺、円通寺、妙満寺です。が、ここにもう一つ加えると、宝ヶ池も非常に素晴らしい。今日のブログのトップの写真は、宝ヶ池から撮ったもの。三つのお寺に引けを取らない雄大な借景といえるでしょう。

正伝寺のお庭は入口の門をくぐってから、山あいの参道を歩いたところにあります。この日は日差しが出てきており、参道では高い木々から溶けた雪が雨のように降り注いでいました。ザーという自然の音に包まれ、大変心地よい空間です。正伝寺のお庭に着く頃にはちょうど比叡山の雲がはれ出していました。タイミングはバッチリです!先にお一人、比叡山が見えてくるのをずっと待っておられる方もいました。正伝寺のお庭は、獅子の児(こ)渡しの庭と呼ばれ、小堀遠州の作庭といわれています。親獅子が子獅子を連れて歩いている様を、七・五・三の数の刈り込みで表現をしています。方丈の廊下は血天井としても知られていますね。

やがて先客も比叡山が見えて満足されたのか帰って行かれ、私一人となりました。聞こえるのはまさに自然の音だけ。鳥の鳴き声や風が木々を揺らす音、そして絶えず聞こえる雪が解けていく音。昔のお庭は、こうして自然の奏でる音が響く空間だったのでしょう。最近はどこへ行っても人の気配がしますが、正伝寺では運がよければこうして世間の流れから切り離されたかのような空間を味わうこともできます。京都中を探してもなかなかこういった場所は見つかりません。そして、この日は見事な雪化粧と比叡山の眺め。贅沢この上ない!!正伝寺の雰囲気をお伝えできればと動画も用意しましたので、ご覧になって下さい。

続いて、円通寺へ。江戸時代初めの後水尾天皇が、比叡山が最もよく見える場所としてこの地に離宮を築き、現在の庭園はそのお庭の跡だといわれています(諸説あり)。しかし、水に恵まれなかったことから移転をした先が修学院離宮です。さて、この日の円通寺も私以外にはもうひと組がおられるだけでした。お庭の雪はほとんど溶けてしまっていましたが、雪の比叡山の雄大な姿は見事に望むことができました。後水尾天皇も、このような美しい比叡の姿を眺めたのかもしれません。こうして景観が残っていることは本当にありがたいことです。比叡山の眺めは「都の富士」と呼ばれ、山頂からのなだらかな山裾の流れは、確かに富士山を彷彿とさせるものです。近すぎず、遠すぎず、ちょうどよい大きさに見えるのでしょう。

三か所目は妙満寺。こちらは雪月花三名園の一つ「雪の庭」でも知られていますが、外の様子から明らかに雪がなさそうでしたので、拝観は行いませんでした。一方、比叡山の非常に雄大な姿は、本堂から後ろへ振り替えると見ることができます。境内全体の様々なものが比叡山の眺めを意識して配置されているように思え、「富士」は抜群の存在感があります。妙満寺へ行かれた際には是非とも見て頂きたい光景です。

最後に宝ヶ池。こちらも比叡山の「借景」が抜群に美しい場所です。ただ、見えるポイントはいくつかありますので、好みの場所を探してみて下さい。私のおすすめは岩倉へのトンネルの手前にある歩道からのポイント。少し高い場所から池を見下ろし、真正面に比叡山を据える抜群の眺め。三つのお寺から比叡山を眺めたことがあるという方にも、是非一度見て頂きたいスポットです。

以上、この日は予報の読みも当たり、素晴らしい京都の雪景色を楽しむことができました。今シーズンはまだ雪化粧どまりで本格的に積もっていませんが、いずれ真っ白な雪景色もお届けできたらよいですね。なお、この日の雪化粧の京都の写真はFacebookで公開しています。どうぞご覧ください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

より大きな地図で 正伝寺 を表示

「冠雪の比叡山 都の富士」への2件のフィードバック

  1. 冠雪の比叡山とても美しいです。正伝寺の動画も拝見し比叡山を望む雪化粧の正伝寺の美しさと自然の音の響きが心地よく時間がゆっくりとながれていように感じます。

    1. 抹茶さん
      いつもコメントありがとうございます。
      そうですね。正伝寺は、
      本当に時間がゆっくり流れている感じがします。
      お庭は時代によって変わるものとは聞きますが、
      自然そのものを取り込んだ借景の風景は、
      時を越えて昔の方々と同じ感動を感じさせてくれるのかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です