光の春 いろいろ


2月も半分の14日を迎えました。2月の前半は日脚の伸びや明るさを感じやすく「光の春」と呼ばれています。

今日は予定より早く朝から雨が降り出してしまいました。年に何回かは、朝まだ目覚ましの鳴る前に雨の音を聞き、予報との違いにハッとして起きることがあります。プロならば慌てて飛び起きていたことでしょう。天気予報はまだまだ当たらない。できることならば四六時中起きて、予報と実況の誤差は見ていたいものです。価値のある天気予報とは、今回のように「外した」ときのフォローの速さにもあると思います。

さて、「光の春」という言葉は、予報歳時記を中心に好んで使われます。もとはロシアの言葉だそうで、氷点下何十℃を普通に記録するような地域では、一見変わらぬ銀世界の中でも、日に日に増していく朝の輝きや室内への日差しから「春は光から」を身にしみて感じるのでしょう。日本でも、気温と日脚の伸びには1か月以上の差があり、まだまだ寒い今の時期には、近づきつつある本格的な春を後押しする言葉となっています。実際、今の時期の京都では、1日に1分程のペースで日の出も日の入りも回復中。つまり1日で約2分も昼の時間は伸びているのです。

そして「光の春」は気象衛星の「可視画像」によく現れます。普段テレビで流れている衛星画像は「赤外画像」といって、雲の温度を白黒の濃淡で表現したもの。実際に人の目で地球を見たような「可視画像」とは少し異なっています。ただ、可視画像では夜になると見えなくなるので赤外画像が使われるのですが、可視画像の方も気象庁ホームページなどで見ることができます。可視画像は、解像度が赤外画像よりも細かく、繊細で美しい雲の形を見ることができます。この可視画像では太陽の日脚によって映る時間帯や範囲が変わっていきます。気象庁ホームページでも時間をさかのぼってみるとよくわかることでしょう。予報士は、可視画像の見える範囲の減りように「秋」を感じ、反対に見える範囲の広がりように「春」を感じているはずです。

同じ「春」でも北へ行くほどまとめてやってきて、しかも劇的です。例えば、京都では梅は2月に咲き、桜は3月終わりから4月初めに咲くものですが、これが札幌へ行くとほぼ同時に花開きます。さらに北へと行くともっと劇的で、モンゴルでは5月から6月のわずか2週間で、枯野が一面の緑に変わるほど、あっという間に春が駆け抜けて行くそうです。大地の緑が一斉に芽吹いて花を咲かせる様は、まさに百花繚乱なのだとか。人生で一度は見てみたい光景です。

京都の2月1日から今日(14日)までの日照時間は54.2時間で、平年値の56.9時間と比べてもそん色ない数字。気象庁のホームページでは月別の日照時間の平年値も見ることができ、京都では1月が123.2時間、2月が117.4時間と、光の春とはいいながら、実は2月の日照時間は数字上は少なくなっています。が、これにはカラクリがあって、月ごとの日数が違っているためです。月単位で積算する気象の数字は、30日平均に目盛りを合わせて比較せねばなりません。30日換算にすれば、1月は119.2時間、2月は124.7時間、1月と2月ではちゃんと日照時間が増えていることが分かります。

今年は気温が低く、梅の開花も遅れています。今日(14日)は、鹿児島・宮崎・福岡で梅の開花が発表されました。いずれも平年よりは2~3週間遅くなっています。とはいえ、梅は桜よりも気温に対して律儀ではありませんので、この数字がそのまま季節の遅れとはならない点に注意が必要。実は鹿児島の桜は、冬(特に初冬)が寒いとむしろ早く咲く傾向にあるようです。面白いですね。今年の京都の桜はどうなるか?京都は早咲きから遅咲きまで、約1か月間桜を楽しむことができます。特に遅咲きの「紅しだれ桜」が多く、ソメイヨシノが散り始める頃に盛りを迎えます。つまり、今年の京都へは4月10日を過ぎた2週目頃に来られるのが、ソメイヨシノが遅れても平年並みでも外れが無いでしょう。

話は変わりますが、京都の北部も含め今年は山間部や日本海側では雪の量が多く、気温の上昇とともになだれにも警戒が必要になります。近年はありませんが、なだれで集落が飲み込まれて一瞬で死者が2ケタを超えることも過去にはありました。日本全国には2万カ所を超える「なだれ危険個所」があります。気温の急上昇、雪の上への大雨、寒の戻りによる新雪なだれ・・・。雪による土砂災害や洪水もあります。春一番は災害の知らせでもあり、春先の情報にはご注意ください。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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