ベテルギウスの爆発で空が変わる!?


最近話題になっている天体に、オリオン座のベテルギウスがあります。オリオン座は多くの方にもなじみのある星座で、ベテルギウスはその中でも赤く明るく輝く天体です。この星は今まさに死を迎えようとしており、近い将来、早ければ今日・明日にでも爆発するというのです。気象の世界にも普通では考えられないことが起こるはずです。

オリオン座は私も小さい時から眺めていて、幼稚園の時に夜空を見上げ、オリオン座を横に傾けて勝手に「かに座」だと思っていたことを思い出します。ベテルギウスが爆発してやがては見えなくなるという話を初めて知った時は衝撃的でした。ベテルギウスは地球からの距離がおよそ640光年と、夜空にある星々の中では比較的近い星です。また、脈動変光星と呼ばれ、大きさや明るさが変化をする晩年の星。その直径は最大で約14億kmだそうで、太陽系に当てはめるとおよそ木星軌道にまで達する巨大さです。

このベテルギウスの表面は一部が盛り上がっていることが近年になって判明し、遠くない将来に爆発することが指摘されています。爆発すると「超新星」と呼ばれ、非常に明るく空に輝くことになります。東京大学の研究結果によると、爆発後、わずか1時間でどの星よりも明るく輝き、3時間後には満月のおよそ100倍もの明るさで輝くようになり、その明るさがおよそ3か月も続くそう。これだけの明るさがあれば昼間でも輝いている様子がはっきりとわかり、想像もできない天体ショーが起こります。

もし本当にそれほど明るいならば、気象の世界にもきっと不思議なことが起こるのではないでしょうか。たとえば、暈(かさ)。空高く薄い巻層雲が出ている時に、日暈が出来ているのを見たことがある人も多いと思いますが、暈は月の光でもできることがあります。ただし、それなりの明るさが必要なため、満月に近い頃にしか見ることができません。ベテルギウスは満月の100倍も明るいとのことですので、太陽や月よりもずっとずっと遠方にある光ですが、暈を描くかもしれません。

また夜に輝くとするならば、ベテルギウスの周りの空は青く見えるかもしれません。空が青いのは太陽の光が空気の粒子にぶつかって青の光が散乱するためです。満月の光でも光源としては弱いため、夜の空は暗いのですが、もしかすると超新星の光が夜空を少しだけ青く染めるかもしれません。他には、非常に珍しい現象ですが、月の光によって夜できる「白い虹」があり、ことによると超新星によってできる虹というロマンチックな光景も見られるかもしれませんね。

もっと単純に考えてみると、ベテルギウスの輝きによって「影」もできるでしょう。現代では街が明るいため満月によって影ができることは知られていませんが、実はできています。満月の100倍ならば、明るさの等級でも満月の-12.7等級よりもさらに5等級ほども明るいことになり、普通に考えると影が出来るはずでしょう。街中でも、もしかすると自分の影を見られるかもしれませんね。また、三日月と金星では、三日月の方が等級上は7倍以上明るいにもかかわらず、金星の方が輝いて見えます。これは蛍光灯と懐中電灯(豆電球)とのどちらが明るく見えるかにも似ていますが、恐らくベテルギウスの爆発も豆電球に近いので、その中で月の100倍の明るさは、想像以上に明るく見えるのだと思います。本当に不思議な夜になることでしょう。・・・以上のことは「文系的に」想像をしてみたもので、理系的に詳しく裏を取ったものではありませんが、どこかに気象にも詳しい天文学者がいて、予測をして頂ければ嬉しい限りです。

ただ、話題になっている理由の一つに人類滅亡説と結び付ける点があります。報道によると、爆発時に放出されるガンマ線バーストは地球を直撃することはないそうで、オゾン層の破壊によって絶滅ということは避けられそうです。また、宇宙線が雲の元を作るという説もあり、とするならば膨大な宇宙線が放出されるベテルギウスの爆発によって雲が多く発生して気候が寒冷化する・・・、というシナリオも素人考えではすぐに思い浮かびます。もちろん公式にそのような話は聞きませんので、大丈夫なのでしょう。ただ、ベテルギウスまでの距離640光年は、宇宙スケールで見るとかなり近いので、爆発した時に実際に何が起こるかは誰にも予測できないのかもしれません。

さて、歴史の話に絡めるならば、超新星爆発の記録として、藤原定家の記した明月記が知られています。彼の日記には数々の天体記録が残されており、天文に詳しい方によると、定家は一流の観測家だったようです。その日記の中に「客星」として、普段の星座の中には現れない「お客の星」として記録されているものがあります。定家自身が見た客星は、現在の研究によると彗星だったそうですが、日記では過去の記録の引用として1054年の後冷泉天皇の時代に出現した客星が紹介されていて、こちらは超新星爆発であったことがわかっています。現在も「かに星雲」としてその名残を見ることができます。

余談ですが、明月記には数々の日食月食の記事もあり、なんとオーロラ(赤気)の記事まであります。当時の京都でオーロラが見えたというのは、中国の記録や天文学的にも証明をされているそうで、定家はその様子を「遠くの火事のようだ」と表現しています。オーロラは現在は北極や南極周辺のものですが、当時は今よりも南に地磁気の中心があったため、京都でも見えたのだとか。ロマンのある話ですね。もっとも、定家がなぜ多くの天文記事を残したかといえば、陰陽道に基づく「天変」としての視点からです。赤いオーロラも「恐るべし、恐るべし」と見ていた定家の心中は、現代人とは大きく異なっていました。

さて、オリオン座には源氏と平家がいます。源氏は白旗、平家は赤旗。つまり、赤く光るベテルギウスは「平家星」。一方ベテルギウスの対角で白く輝く星(リゲル)は「源氏星」。そう、もうじき「平家」は消えてなくなろうとしているのです。なんと儚い偶然か。2012年の大河ドラマは平清盛。もしこの年に「平家星」が爆発してしまうならば、またとない話題となることでしょう。ただ、宇宙スケールで「もうすぐ」というのは「今日かもしれないし1万年後かもしれない」といった幅のあるものです。それに宇宙には光より速いものがないため、具体的にいつ起こるかは爆発するまで分からないようです(ただし、星の中心部で光より先に放出されるニュートリノによって、数時間前に分かるともいわれている)。この話は頭の片隅に置いて、気長に待ちましょう。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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