雪を求めて北へ 高雄・大原・鞍馬


27日は京都市の山沿いで雪が積もりました。時期的に、積雪の光景を狙うならば今シーズン最後のチャンスとなるやもしれません。京都フリーパスを使って、北の、高雄大原鞍馬へと足を延ばしてみました。

朝は嵐山も一時白くなったようですが、すでに日差しは春の味方。強い力であっという間に冬の名残を解かしてしまいました。もうすぐ3月。雪景色もそろそろ最後です。先日来、週間天気図や長期予報を見定めていて、この日が今シーズンの当座のラストチャンスと踏んでいました。ここを逃せば次はもう”12月”まで待たねばならない(かもしれません)。ということで、鞍馬・大原・高雄へと足を運びました。本当は朝一番で行きたかったところですが、所用のため出発は10時と遅くなりました。

今回は鞍馬や大原など山沿いへ行かないと雪は無いと考えて、移動は「京都フリーパス」を利用してみました。この切符は、京都近郊の電車バスのほぼ全てが乗り降り自由という夢の切符で、昨年の12月に発売されました。料金は2000円。「交通を制する者は京都を制す」。まさに”無敵”の切符です。それなりに移動距離があったり、交通を駆使する予定の方には力を発揮するでしょう。ただ、現実的にはここまでの「能力」は必要ないことも多いため、行程を見定めて、京都観光一日(二日)乗車券や、各交通の単品でのフリー券とも比較の上で買われるのがよいかと思います。なお、購入者にはお店などで割引等の特典もついています。

さて、最初に向ったのは高雄。雪が残っていることを期待したのですが、残っているのは本当に少しだけ。清滝川の手前で諦めて帰ってきました。それにしても雰囲気が寂しい。観光シーズンは、大勢の人でにぎわう神護寺界隈ですが、この日は一人たりとも出会うことすらありませんでした。

続いて市街地へ戻って、大原へ。先週大原へとやってきた際は一面の銀世界でしたが、この日到着した頃には、雪もすっかり消え、いつもの大原です。ただ、朝積もっていたのはライブカメラで確認済みだったので、諦めずに寂光院へと向かいます。

日陰にはちゃんと雪が残っていました。気温は低いので日陰ならば雪としては存在できるのですが、やはり日差しが強力で、日当たりの違いでほんの数歩で嘘のように景色が変わります。これも晩冬の積雪の特徴です。

寂光院の雪はほとんどが消えていましたが、赤い南天や緑の苔が美しい色合いを見せてくれました。冬の色彩には和まされるものがあります。雪はあまり見られませんでしたが、訪れた価値は十分にありました。

大原を後にして向ったのは鞍馬。バスで戻って叡山電車で向います。フリーパスですので、どの電車の自動改札も通ることができ、感動します(笑)鞍馬は大原よりも雲の流れの上流側にあたって標高も高く、雪が残りやすい傾向にあります。今回は最後に残し、かつ最も期待していた場所です。鞍馬駅前には雪はありませんでしたが、由岐神社の拝殿の屋根には”ゆき”も少し残っていました。

清少納言をはじめ、歴史上の著名人も歩いた「つづら折り」の険しい山道を登っていくと、日陰では雪を目にする機会も増えていきます。枕草子では「近くて遠いもの」の例えとして、鞍馬寺のつづら折りの道が出てきますが、毎回その通りだなぁと思いながら登る道。100円のケーブルカーでグイッと登るのも魅力的ですが、時間と体力がありましたら、一度は挑戦してみても面白いでしょう。

さて、本殿まで来ると美しい山々の景色が広がります(鞍馬寺では本堂ではなく、本殿金堂と呼ばれています)。それもそのはずで、本殿付近の標高は400mもあり、遠くには比叡山も望むことができます。こうして比叡山をはっきりと望めることに霊的なものを想像する説もありますが、鞍馬寺の教えも他に類を見ない独創的なものです。本殿前の金剛床と呼ばれる魔法陣のような美しい幾何学模様の中心では、宇宙のパワーを感じられるのだとか。金剛床自体も人間と宇宙との一体化を表現しています。

人の少ない本殿を後にして、奥の院方面へと向かいます。霊宝殿の辺りからは山道になり、木陰ということもあってか登るたびに雪が増してきます。牛若丸の背比べ石の辺りが最高点で、標高は500m。足元は一面の銀世界。朝から求めていた風景に、ようやくたどり着くことができました。・・・雪の鞍馬山の美しい様子は次回以降にお届けします。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

「雪を求めて北へ 高雄・大原・鞍馬」への2件のフィードバック

  1. 京都の山沿いの雪景色にもうすぐ春がくる様な雰囲気が感じられます。京都は市街地から山沿いへと幅広く素敵な光景がみられる場所がたくさんありますね。

    1. 抹茶さん
      コメントありがとうございます。
      そうですね、遅れているとは言われながらも、
      一歩一歩春が近付いているのを感じます。
      大原や鞍馬は、割と行きやすいのですが、
      遠くへ旅行に来たかのような雰囲気がありますね。

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