下鴨神社 流し雛


3月3日は桃の節句。下鴨神社では流し雛が行われました。

桃の節句は、江戸時代に定められた五節句の一つです。現在では、7月7日の七夕や、5月5日の端午の節句が知られています。その他は、9月9日の最も大きい奇数(陽数)が重なる「重陽(ちょうよう)の節句」、1月7日の七草粥で知られる「人日(じんじつ)の節句」、そして3月3日・桃の節句で知られる「上巳(じょうし)の節句」です。古来宮中では節句の日には邪気をはらうため、臣下を集めてその日を祝う節会(せちえ)が開かれていました。

現代では3月3日を「桃」の節句というには少し早いのですが、旧暦の3月3日は、今の暦ではおよそ3月23日から4月22日の間を移動し、桃の花が咲く頃とだいたい一致しています。京都では、桜の花が咲く頃に、京都御苑で見られる桃の花が知られています。将軍塚の大日堂にも、枝垂れ桃が美しい花を咲かせます。桃は花が美しいだけではなく、邪気を払い不老長寿をもたらす果物として知られ、弥生時代の遺跡から祭祀に使用されたと思しき桃の種が大量に出土したこともあるほど、日本でも古くからその力を信じられてきました。

下鴨神社の流し雛は「さんたわら(桟俵)」と呼ばれる籠に乗せた夫婦雛を御手洗(みたらし)川に流し、子供たちの無病息災を祈る神事です。本来、雛人形や人形(ひとがた)は子どもたちの厄を代わりに受けてくれるとされ、そうした人形などを川に流すことで厄払いになると信じられてきました。水は穢れを洗い流すもので、特に下鴨神社の御手洗川は、葵祭の斎王代の禊(みそぎ)や、足付け神事でも知られるように、穢れを払う川として古くから信仰を集めています。なお、雛段に飾られる雛は衣装などもきらびやかで、凝った細工が施されていますが、流し雛は簡素なものが用いられています。

この日は、人間のお内裏様とお雛様も登場します。お雛様は十二単(じゅうにひとえ)で着付けの様子も公開され、人気を集めています。御手洗川の周りは早くから混雑していました。この日は、気温が上がり日差しも強く、暖かいを通り越して暑さを感じるほどでした。神事では、お雛様・お内裏様による流し雛も行われました。

ユニークだったのは、京都タワーのマスコット「たわわちゃん」も着物を着て、流し雛を行ったこと。たわわちゃんは舞妓さんに憧れる女の子で、この日は宮川町の舞妓さんにも出会えて大満足のようでした。着物姿もなかなか似合っていますね。

最後に子どもたちによる合唱が奉納されました。元気いっぱいに歌う子どもたちは、見に来られていた親御さんたちもとても嬉しそうでした。現在のひな祭りは女の子の行事というイメージがありますが、その昔は男女問わず、子どもの無病息災を願う行事でした。皆、元気で健康でこの1年も成長して行ってほしいですね。

さて、神事は11時からで、一般の方の流し雛は12時過ぎから行われます。一般向けには「さんたわら」の無料配布も行われていますが、やはり人気で、早い時間に無くなります。もちろん有料で手に入れることもできます。昨年のものを流してもよいですし、今年手にしたものを流してもよいそうです。一般の流し雛が始まると、大混雑となり、順番が回ってくるまでしばらくかかります。雛を流すだけでしたら12時半ころに来ても十分で、地元の方はよくご存じなのか、人が少なくなるのを見計らって流される方も見かけました。なお、流された雛は、輪橋(反り橋)を越した辺りでせき止められて溜まっていきます。なかなか美しい眺めでした。

一方、たわわちゃんは楽しそうに記念撮影に応じていました。彼女はおっとりとした性格だそうですが、恥ずかしがり屋ではないようで、カメラを向けるとポーズを決めてくれました。皆さんからも一緒に写真を撮ってほしいとのお願いがひっきりなしです!

下鴨神社の境内では、尾形光琳の国宝・紅白梅図屏風のモチーフとなった梅の木にも、花が咲き始めています。3月に入り、京都も少しづつ「色」が見られるようにになってきました。ひな飾りに見える様々な彩りにも、来たりゆく春を感じます。あと1か月で桜も咲いて、草木も緑を取り戻し、さらに色彩は豊かになっていきます。京都の春は華やかです。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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