雨宝院の桜と雪


西陣の聖天さん、雨宝院で桜が雪のように降り積もっています。

京都は朝から黄砂が飛んで視程が悪く、晴れていてもすっきりしきらない一日。観測値では視程が5km未満になりました。これだと、円町辺りから東山の大文字山や、嵐山も見えません。25日にかけてゆっくりと薄くなりそうではありますが、似たような状態が続きそうです。さて、昨日のブログでも雨宝院のことは書きました。今日(24日)の朝に訪れてみると、境内は散った桜が地面を覆って、まるでうっすらと雪が積もったかのようです。昨年も見て感動した光景に、今年も出会うことができました。

境内の歓喜桜は御室桜と同じ種類で根元から花をつけます。似ていますが、観音桜と呼ばれる桜もあって同じような白くてやや花弁の大きな花を咲かせます。これらの桜は御室桜と同じような経過をたどりますので、見頃も数日間と短く、散り際も御室桜が散り始めたとの情報を見て訪れるとよいでしょう。

雨宝院の境内では、空を覆い尽くす様々な種類の桜を堪能することができます。遅咲きが多く、今は八重桜がまだまだ見頃で、下を見れば花弁の雪、上を見上げれば真っ白な八重桜と、上も下も桜づくし。一歩境内へと足を踏み入れると、別の世界に入ってきたかのように感じます。山吹や椿にも桜の花びらが乗って、彩りを添えていました。境内には石楠花も花を咲かせ、あちらこちらに見どころが隠された、西陣の花の寺。じっくりと境内を隅々まで散策したくなります。

雨宝院はお寺の由緒も古く、平安初期にまで遡ります。弘法大師・空海が、嵯峨天皇の病気平癒を祈願して造った大聖歓喜天像を祀ったお寺(大聖歓喜寺)をルーツとしています。大聖歓喜天のことを略して聖天(しょうてん)と呼び、象の頭に男女が抱き合った姿の象頭人身のお姿をされています。また、境内にある染殿井(そめどのい)は西陣五水の一つで、地元では「どんなに日照りが続いても枯れることがない」といわれているそう。西陣織の染色に使われたことから染殿井と呼ばれるようになりました。

観音堂に安置される重要文化財の千手観音像は、一木造で平安初期の作風。千本五辻にあった大聖歓喜寺のものと考えられています。仏像ファンには知られた像かもしれません。辺りは、応仁の乱の激戦地の一つ西陣。戦火でお堂が燃えた際には、信徒がこの像を船岡山に隠したとされ、その時に手の何本かが失われて現在のようなお姿になったそうです。博物館の中ではなく、今でもこうして西陣の街にあって人々の信仰を集め続けているところがすごい!仏像はお寺の方がいる時に限り、拝観させていただくこともできます(基本的には事前申込)。あくまで今も信仰を集めている仏様。博物館とは違いますので、手を合わせる気持ちを持って臨みましょう。

境内は他にも神仏習合の様式がみられ、歓喜天を祀る本堂の前には鳥居が立っています。観音堂、大師堂、庚申堂、不動堂、稲荷堂など、順番にお参りをされている地元の方をよくお見かけします。大師堂の弘法大師像は、汗をかくほど辛いことでも助けて下さるそう。桜の美しい境内ですが、時代を越えても変わらぬ厚い信仰も感じられるお寺です。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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