斎王代・女人列 御禊(みそぎ)神事 2012年


4日は、上賀茂神社斎王代・女人列 御禊(みそぎ)神事が行われました。斎王代を中心に煌びやかな平安装束に包まれた一行が、上賀茂神社の川で身を清める神事です。

この神事は、その年の葵祭のヒロインである斎王代が十二単の衣装で初めて登場するため、報道各社もずらりとカメラを並べる注目度の高い神事です。ただ、時間が10時からと少し早目なことや、上賀茂神社が市の中心地からやや離れていることもあって、他の混雑を極める神事に比べると人は少なめです。斎王代などの女人列は昭和31年(1956年)に復活し、以降、御禊(みそぎ)神事も上賀茂・下鴨の両神社で隔年交代で行われ、今年は上賀茂神社の順番です。

斎王代は、かつて賀茂の神に仕えた皇族の未婚の女性・「斎王」の代理という意味の呼び名です。斎王は平安時代の嵯峨天皇の世に始まって、鎌倉時代初めの後鳥羽天皇の代まで続きました。この初代の斎王を務めた方は「有智子(うちこ)内親王」と言いますが、実は嵯峨野散策をしていると、この方のお墓の前を知らず知らずのうちに通っている方も結構いるかも知れません。場所は落柿舎(らくししゃ)のとなりで、比較的目立つ陵墓。ちなみに、嵯峨天皇は嵯峨野の地に離宮を構えたため「嵯峨」の名がおくられ、その皇女である有智子内親王も嵯峨西荘で亡くなっているため、陵墓が嵯峨の地にあります。

斎王の制が始まったのは、嵯峨天皇とその兄・平城上皇との争いである「薬子の変」の平定を、嵯峨天皇が賀茂の神に願った際に、願いがな叶えば賀茂の神へと奉仕する女性を出すと願をかけたためです。その後、無事に鎮圧された暁として、嵯峨天皇の皇女・有智子内親王は僅か4歳で斎王となり、以後20年ほどお役目を務められました。なお、斎王は斎院と呼ばれる場所で清らかな生活をしていました。有智子内親王が過ごした斎院の場所ははっきりしないそうですが、現在の櫟谷(いちいだに)七野神社付近に、歴代の斎王が過ごした斎院があったと考えられています。

斎王は神に仕える身として身を清める禊(みそぎ)を行う必要がありました。現代でも神社には手水屋がありますが、水には穢れを洗い流し、身を清める役割があります。賀茂の神は賀茂川(鴨川)に沿って鎮座する水の神であり、現在も上賀茂神社・下鴨神社には小川が流れています。両神社の参道はその小川の上を橋で渡っていて、参拝者も参道を通ることで、知らず知らずのうちに穢れを落としてから参拝をしているのです。かつての斎王は鴨川で穢れを落とす禊をしていましたが、現在の斎王代は、それぞれの神社にある御手洗(みたらし)川に手を浸して禊を行います。また女人列の皆様は、人の形を紙でかたどった「人形(ひとがた)」に息を吹きかけて穢れを移し、御手洗川に流すことで身を清めます。

様々な歴史的背景はあるにせよ、斎王代や女人列はその美しい平安装束から純粋に「雅(みやび)」と感じられるもの。やはり毎年見るたびに、その美しい衣装に目をひかれます。禊神事の斎王代は重さが20kgほどはある十二単(じゅにひとえ)の衣装を着て、ゆっくりと歩かれます。こうした一つ一つの所作も「雅」さを高めているのかもしれませんね。ちなみに斎王代は一般公募はしておらず、京都ゆかりの寺社や文化人の令嬢から選ばれるのが通例となっています。その理由は、一説には高額の費用がかかるためともいわれます。昨日も書きましたが、葵祭の行列(路頭の儀)の催行だけで2900万円、雨が降ればクリーニング代金に数百万円から1000万円。その他の神事諸々を入れると、さらに費用がかかるはずで、雅さの裏には現実的な話も隠されています。

この日は禊の神事が終わり、記念撮影をする段になって急な雨に見舞われてしまいました。撮影用のひな壇にまさに並ぼうとしていたところでしたが、衣装が濡れてしまうと大変なので、慌てて屋根のあるところで雨宿りをされました。その様子がまたなんとも雅!華やかで色とりどりの衣装を着た女官たちが雨宿りをしている様子は、きっと千年前にもこうした光景があったに違いないと思わせてくれました。たぶん日本一雅な雨宿りですね!ただ、衣装のクリーニング代を思うと、ハラハラせずにはいられません。葵祭(路頭の儀)は、一時は雨に降られやすかった年も続きましたが、2004年以降は昨年まで8年連続で雨に降られていません!今年も無事に催行出来てほしいと願っています。今回の雅な様子は少しだけ動画があります。最後に小さく歩かれているのが斎王代。雰囲気をお伝えできれば幸いです。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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