台風15号は過去最強だったのか?


沖縄本島を通過した台風15号。風については当初予想されたほどの猛烈な風は観測されませんでした。

今日(28日)は、近畿地方にも台風の一番外側の雲がかかりました。気象衛星雲画像で見ると、自分の上に出ている雲のスケールの大きさに驚かされることがあります。さて先日、台風15号が沖縄本島を通過して行きました。最大瞬間風速70m/sにも達する恐れがあると警戒されましたが、実際には40m/sそこそこにとどまり、風については歴史的な台風とはならずに済みました(雨は記録的です)。これ自体は非常に良いことだと思いますが、なぜ予想が過大になってしまったのか?という疑問は残ります。台風の中心付近では、周りから激しく風が吹き混んでくるために強い風が吹きますが、気象庁は、台風中心の外側に出来た「壁雲」が、外から中心へと吹き込む風を遮った(壁雲の場所で上昇して中心まで到達しなかった)ため、予想より風が吹かなかったと説明を行っていました。確かにもっともらしい。ただ一方では、過去60年以上、1600個を超える台風のデータがある中で、同様なケースが無かったのかという疑問が純粋にわきました。今後のためにも雨雲レーダーなどからその雲の壁の存在を把握し、風速予報に反映させるなど、研究が進めばと思います。

一方、そもそも台風の解析値910hPaが妥当だったのかという疑問もあります。洋上には観測点がなく、またつど飛行機を飛ばして中心気圧を計るのも危険で費用がかかるため、台風の中心気圧は過去に実際に観測された気圧と、気象衛星雲画像の台風の渦巻きの形体を対応させて、人の手によって「推定」しているのです。推定された気圧によって台風の勢力もカテゴライズされていきます。実はこの推定アルゴリズムは過去から一定とはいえず(私の推測です)、特に近年は900hPaを下回る猛烈な台風が減ったといわれています。

今回の台風は沖縄本島に近づくと気象衛星画像でもやや衰えを見せ、920hPaに推定気圧が高まり、沖縄本島の名護市付近を通過しました。名護にはちょうど気象官署があって気圧を観測していますが、実際に観測された最低気圧は934.3hPaにとどまりました。もちろん台風の中心気圧の分布は漏斗状になっていますので、わずかに中心から外れただけでも気圧は大きく変わりますが、2004年に同じく沖縄の名護市付近を通過した台風18号は、925hPaの推定に対して、実際に924.4hPaを観測しています。今回は推定気圧の920hPaから約15hPaも高く、そもそもの910hPa(ないし920hPa)の解析が妥当だったのか疑問を感じます。ただ、あくまで中心気圧は「推定」である以上、ある程度の誤差は許容されなければならないかもしれません。

また「防災」の視点からすれば、やはり非常に強い台風が直撃するという事実は変わらず、今回の「過去最大級」という言葉を持って、多くの方に避難を促せ、命を守れたというのは価値あることでしょう。気象情報は判断支援情報です。出来る限り正確な予想は前提としつつも、いかに受け手の行動に繋げるかという視点を持って予報を出すことが求められる時があります。今回のように、命や財産に危険が及ぶ可能性がある気象現象があれば、仮にその発生確率が高くはなくとも、「危ない」と声高に予報を出すことがあります。見逃すと取り返しがつかないことがあるため、空振り覚悟でも情報を伝えようとする心理が働くのです。気象庁も最近は「過去に経験したことがない」などの非常に強い言葉を使うようになりました。予報担当者が感じている危機感をいかに伝え、行動に結び付けるか。持てる言葉を駆使し、伝えるプロにならねばならないのでしょう。天気予報の人間臭さは、防災情報にこそ強く出るように思います。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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