松花堂庭園の秋


八幡市にある松花堂庭園は、松花堂昭乗ゆかりの名園です。

松花堂昭乗は近衛信尹・本阿弥光悦と共に、寛永の三筆と評された書の名人で、書のみならず、茶道・作庭などにも通じた文人で、石清水八幡宮の社僧でもありました。昭乗は石川丈山・林羅山・小堀遠州・木下長嘯子らと交友があり、小堀遠州とも親戚に当たりました。「松花堂」とは、昭乗が晩年に構えた庵の名前で、元は石清水八幡宮のある男山山中にありました。

しかし、明治期の神仏分離に伴い、現在地に移転。昭和52年に八幡市(旧八幡町)の持ち物となった庭園は、2002年に美しく整備されて再オープンしました。男山の旧地には、石碑が立ち、松花堂跡は平坦地として今もありし日の雰囲気を残しているかのようです。男山山中にはこうした建物跡の平坦地が多く、改めて神仏分離運動の激しさを感じられる場所です。

松花堂といえば「松花堂弁当」が知られますが、これは松花堂昭乗が作ったものではありません。昭和の初めに、「吉兆」の創業者である湯木貞一が、昭乗の使っていた物入れ(四つ切箱)を参考にし、試行錯誤のうえ懐石料理を盛り付け、弁当として世に広めたのが「松花堂弁当」の始まりです。十字に仕切られていることで、それぞれにご飯や煮物、焼き物などを区別して盛り分けられるようになっています。食材同士の匂いや水分が混ざらず、見栄えも美しい弁当として現在でも人気を博しています。松花堂庭園に隣接して、吉兆の松花堂店があり、「本場」で松花堂弁当を頂くこともできますよ。

現在の松花堂庭園は、内園と外園とに分かれています。外園は竹の美しい現代的な日本庭園です。紅葉もあり、多数の生け垣も目を引きます。茶室が外園だけでも3席あり、いずれも再現されたものですが、それぞれ松竹梅の名を冠した趣ある美しい茶室となっています。美術館の前には大きな桜の木もあって、春には目を楽しませてくれそうです。

内園は国の史跡にも指定されていて、東車塚古墳を取り込んだ面白いお庭。茶室の松花堂も残されています。内園は写真撮影が禁止ですのでご注意ください。松花堂は方形の茶室で江戸時代の寛永14年(1637年)の建造。京都府の文化財に指定されています。やはりひなびた感じがあって雰囲気のよい茶室です。

書院は桃山時代の様式を伝える建物で、元は男山山中の「泉坊」にあって小早川秀秋の寄進ともいわれ、玄関(車寄せ)は桃山城の遺構で秀吉の家紋もほどこされています。書院の主室には玉座があり、後陽成天皇や孝明天皇がしばしば行幸になり、この玉座の間に坐して、日の出を眺めていました。男山山中からの眺めはさぞ絶景だったことでしょう。

園内はとにかく竹の美しさが際立ち、この日は紅葉の赤、竹の緑、空の青、雲の白が非常に美しく迎えてくれました。石清水八幡宮からは歩けなくもありませんが、やや離れた場所にありますので、八幡市駅前からバスやタクシーでの移動がよいでしょう。開園は午前9時から午後5時まで。毎週月曜日と年末年始が休園です。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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