城南宮 七草粥の日


2月11日は城南宮七草粥の日でした。本来の七草粥は今の時期に頂くものです。

七草粥は、現在では新暦の1月7日に頂くことが浸透していますが、本来は旧暦の1月7日に頂くものですので、ちょうど今の時期に当たります。城南宮では、立春(2月4日)から7日後の祝日である2月11日を七草粥の日として、境内では七草粥の接待が行われます(有料:500円)。七草粥に入れる春の七草は、その名の通り春の若菜ですので、やはり今の時期のほうが材料も手に入りやすく、本来の趣旨に沿っていますね。

七草粥の歴史等については、以前書いた御香宮神社の七草粥の記事をご覧いただくとして、今回は前回の記事で書いていない話を。城南宮の七草粥は、鳥居の外にある「斎館」で頂くことができるのですが、初めての方にとってはなんとも不思議な歌が流れています。まずは動画をご覧ください。

「唐土の鳥が 日本の土地に 渡らぬ先に 七草なずな テッテッテロロロ・・・テッテッテロロロ・・・テッテッテロロロ・・・」が、1フレーズで、これが延々繰り返されています。きっと、七草粥を頂いている間に歌詞とメロディを覚えて帰られることでしょう。実はこの歌は七草粥の囃し歌。七草を刻むのは本来は前日6日の夜で、恵方に向かって新しいまな板を置き、さらに「薪、包丁、火箸、すりこぎ、杓子、銅杓子、菜箸」の七種をそばに置いて、七草をまな板に乗せると、右手に包丁を持ち、左手に火箸とすりこぎを握り、囃し歌を歌いながら七回刻むのを七度繰り返します(計49回刻む)。これは七草を七星(北斗七星)と見て、七曜と九曜と二十八宿、五星を合計した四十九星を祀るという意味があるそう。以上は、昭和(戦後)の京都の風習を書いた本を参考にしました。現在はこの通りにやっているところは、あるのでしょうか・・・。

七草の囃し歌は全国各地に伝わっていて、それぞれ歌詞は微妙に異なっています。どれが正しいかは分かりませんし、意味も様々ですが、唐土の鳥が疫病を広めるという説があるのが面白いところ。渡り鳥が運ぶという近年の鳥インフルエンザの脅威にも共通するところがあります。一方で、唐土の鳥は、別名をハクガ鳥という八千年の長寿の鳥で、春の初めに七草を食べるので長寿なのだという説もあります。また、唐土の鳥は鬼車鳥(きしゃちょう)だとする説もあり、この鬼車鳥は災いを運び、夜も目が見え、人の捨てた爪を食い、子どもの衣服に血の滴をかけ、それを知らずに子供に着せると疳の病を患うともいわれています。このように定説はないようですが、いずれにしても、七草粥を頂くことで無病息災・健康長寿を願うことは共通しています。

さて、城南宮では、七草の実物も奉納されていました。旬の若菜には生命力があり、立春を過ぎて日差しも暖かさを取り戻してくる今の時期のほうが、新暦の1月7日よりもしっくりきますね。現在の各地の祭事は、新暦に移って本来の時期とは異なってしまい、古人の感覚とはずいぶんと違うものもあるなか、城南宮の七草粥は貴重な体験をさせてくれていると思います。

城南宮の七草粥は、しっかりと味付けがされていますので、そのままおいしく頂くことができます。引っ切り無しに多くの方が訪れているのも印象的でした。2月11日は祝日ですので、毎年の恒例行事とされている方もおられるのでしょう。皆さんも機会がありましたら、城南宮で本来の時期の七草粥を頂いてみて下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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