円山公園の北西、八坂神社に近い付近に働く少年の像があります。
円山公園は、約86600平方メートルもあり、野球場2個分ほどの広い公園です。京都市最古で明治時代に造られた公園の中には様々な像や句碑が点在していて、探してみると私のような「マニア」にとっては、面白いものが次々に見つかる場所でもあります。なかでも比較的目立つ場所に建っている像が、今回ご紹介する「働く少年の像」です。都市伝説で「動く少年の像」と言われていると耳にしたこともありますが、動く像ではありません(笑)
像は半ズボン姿で新聞を抱え、新聞配達をしている少年を、働く若者の象徴としています。像が建てられたのは昭和37年11月3日で、実は全国の主要都市に同じような像が同時期に10体ほど建てられました。当時は学業の傍らで新聞配達を担う若者が多く、像に添えられた案内板によると「働く少年少女たちに仕事への誇りと責任を、大人たちには彼らへの愛情と理解を呼びかけ」る目的で造られたそう。また「人生の大切な時期を自分自身の力で切り開こうとしている彼らを励まし、彼らの健やかな成長を願」うという思いも込められているようです。
像を制作したのは朝倉響子さんで、全国各地の像を手掛けられている彫刻家です。よく見ると、像の横には「1958 響子」の文字も刻まれています。全国に作られた働く少年の像では、Webで調べた限り東京、岡山、広島とも朝倉響子さんでしたが、他にもあるかもしれません。像容は半ズボンと長ズボンとがあるようで、円山公園の像は多数派の半ズボンタイプです。
円山公園に像が建てられた11月3日には、「働く少年をたたえる会」の主催で「働く少年の銅像まつり」が毎年行われています。新聞配達をする若者は少なくなったと思いますが、今でも働きながら学校に通う生徒は少なからずおり、「働く少年をたたえる会」から京都府内の定時制高に通う生徒や保護者らに奨学金も贈られています。時を経ても像を建てられた際の理念は生きているようです。個人的には、像の前を通ると仕事と学業に頑張っている少年少女がいることを思い、自分も頑張らねばと気合を入れています。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。