安井金毘羅宮の櫛まつりは、古くなったり傷んでしまった櫛やかんざしに感謝をこめて供養するお祭りで、昭和36年に櫛供養が行われたのを始まりとしています。翌年には安井金毘羅宮の中に櫛塚(久志塚)が建立されました。やがて時代風俗の着付けと結髪の正しい伝承を目的として京都美容文化クラブが設立され、櫛まつり実行委員会が設置されて、時代風俗行列を交えたお祭りとして発展してきたそうです。もともとは「櫛の日」にちなんで9月4日に開催されていましたが、最近では9月第4月曜日に行われています。
まずは神事が13時から櫛塚の前で行われ、各時代の髪型に髪を結い衣装をまとった皆様も参列されます。今年は休日に挟まれた平日とあってか例年以上に人が多かった印象で、神事の場所の周りはすごい人口密度でした。神事が済むと、今度は拝殿前に設けられた簡易の座敷で「黒髪」の舞が披露されます。今年は舞妓さん姿の方で、こちらも辺りは神事の時から凄まじい人だかりができています。
黒髪を舞われているのは本物の舞妓さんではなく、井上流の舞を習得されているモデルさんとのことでした。髪は「先笄」を結っています。本物の舞妓さんが「先笄」を結うのは芸妓さんになる襟替え前の1週間ほどしかありませんので、モデルさんであっても目にできるのは貴重な機会です。とても美しい舞に周りの見物客も魅了されていました。なお、黒髪の舞を舞うのは年によっては芸妓姿の時もあります。
続いて、各時代のモデルさんたちが座敷に上がって、ちょっとしたファッションショーのようになったあと、14時15分から時代風俗行列が神社を出発して祇園を練り歩きました。時代は、古墳時代から奈良時代などを経て大正時代や現代舞妓まで多彩です。特に江戸時代が最も充実しています。髪形を見せるお祭りですので、髪に注目をしたいですが、華やかな衣装にも目が行きます。髪は、一人一人に別々の髪結いが付いているというのもすごいところですね。
行列の方は混雑が少なく、じっくり眺めることが出来ます。お勧めは祇園白川周辺。一行は東大路を経て花見小路から新橋通へ入り、一回りして白川南通を戻ってきます。いずれも町家の風景と時代装束がよく合って絵になる場所です。さらには休憩時間もあって、さながらモデルさんたちの撮影会と化します。この日も多くのカメラマンが集まっていました。この後、行列は花見小路を通って神社へと戻って行きます。伝統の髪形と意匠を目にできる櫛まつりは、京都らしいお祭りとしてこの先も人気を集めることでしょう。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。