聖護院は本山修験宗の総本山で、平安時代の末期、白河上皇の時代に、修験僧として名を馳せていた増誉(ぞうよ)大僧正が、上皇の熊野詣に際して先達を務め、その功績によって寺を賜ったのがはじまりで、のちに「聖体護持」から2字を取って聖護院と名乗りました。後白河天皇の皇子が入寺して以来、門跡寺院として高い格式を誇りました。昨年から秋に特別公開期間が設けられて参拝しやすくなりましたが、それ以外の期間は基本的には非公開というお寺です(団体は事前申し込みで通年可、2017年は3月まで特別公開中)。
節分の2月2日・3日は、拝観料も不要で夜の19時半頃まで境内に入ることができ、修験道特有の蔵王権現像や役行者(えんのぎょうじゃ)像など、貴重な仏像に手を合わせることができます。修験道は日本古来からの山岳信仰と仏教や道教が結びついた、日本独自の信仰形態です。厳しい山々で修行し、困苦を忍び、心身を修練して法力(験)を得て、やがては悟りを開き即身即仏を目指します。
さて聖護院では、不動明王が宸殿に3躯(く:仏像の単位)あり、さらに三宝荒神と孔雀明王、役行者に蔵王権現像もあります。それらの仏像を特別に目の前で眺め、手を合わせることができるのですからたいへん貴重な機会です。宸殿向かって左(東)の本堂には、智証大師・円珍作という平安期の不動明王像があります。像容も非常に美しく、暗くなる時間帯に向き合うと昼間以上にありがたみを感じます。
また、宸殿や書院内部の保存状態の良い見事な襖絵も目の前で見ることができ、その格式の高さを感じられます。こちらも暗くなる時間帯のほうが金箔の輝きが感じられるでしょう。節分の日は、宸殿前で蝋燭を求めると、祈祷もして頂けます。通常は山伏さんですが、私が訪れた時間帯は鬼がご祈祷をされていました。聖護院の3日の追儺式では、鬼は法力でよい鬼へと改心しますので、一足早くよい鬼になっていたのかもしれません。機会がありましたら、ぜひ節分の聖護院にも訪れてみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。