10月の「史跡でたどる京都物語」でもお話しした山科本願寺跡。今年新たに史跡公園が整備されています。
戦国時代、京都近郊の山科に一大拠点を持ったのが山科本願寺です。親鸞聖人の子孫で本願時第8世の蓮如上人によって築かれた寺院で、御本寺(ごほんじ)・内寺内(うちじない)・外寺内(そとじない)の三つの区画が土塁で囲まれ、宗教施設や信者が居住する街全体を防御施設の土塁や堀で囲んだ堅牢な寺内町(じないまち)を形成。「寺中広大無辺にして荘厳。さながら仏国のごとし(二水記)」と讃えられました。
山科本願寺は1532年に日蓮宗勢力や細川晴元・六角定頼方の軍勢によって陥落しましたが、その遺構がおおよそ地下鉄・東野駅の西側一帯に残されています。蓮如上人御廟を中心に、江戸時代に建立された西本願寺系(浄土真宗本願寺派)の「山科別院」と東本願寺系(真宗大谷派)の「長福寺」が位置。両寺の間にはかつて巨大な蓮如上人像がありましたが、太平洋戦争中の金属供出で姿を消し、現在はその台座のみが残されて、往時の像の大きさを伝えています。
蓮如上人御廟の裏の山科中央公園には、山科本願寺の土塁が残されており、その高さには圧倒されるでしょう。外寺内と内寺内との間に位置した土塁で、登ることができます。そのスケールの大きさには驚くばかり。
一方、山科中央公園の南西側、国道1号北に位置する地にも御本寺の土塁が残り、2021年に史跡公園が整備されて、発掘された石風呂などの位置が現地に表示されています。殺風景ではありますが、貴重な場所と言えるでしょう。近くには蓮如上人が往生した地とされる西宗寺があり、鶯を放った蓮如上人像もあります。
また、東野駅の東側には蓮如上人の隠居所とされる南殿(なんでん)跡の土塁が残り、蓮如上人の御指図の井もあります。山科本願寺跡を範囲が広く、現地の史跡を辿って歩くと「寺中広大無辺」を感じることが出来るでしょう。機会がありましたら、散策してみてください。
ガイドのご紹介
京都検定1級に4年連続最高得点で合格(第14回~第17回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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