4日に真如堂を訪れました。まだ紅葉が楽しめる一方、かなり空いています。
吉田山の東に続く神楽岡にあるのが真如堂。正式には真正極楽寺という天台宗の寺院で、永観2(984)年に、戒算上人が延暦寺の常行堂に安置されていた阿弥陀如来像を神楽岡に移して開創されました。この阿弥陀如来像(本尊)は「うなずきの弥陀」と呼ばれています。
時をさかのぼった平安時代の初期、慈覚大師・円仁が、霊木からこの阿弥陀像を彫ったと伝わりますが、もうすぐ完成するという時に、円仁が「比叡山の修行僧のための本尊になって下さい」と述べて眉間に白毫(びゃくごう)を入れようとすると、なんと阿弥陀像は首を振って拒否されました。そこで今度は「都に下って、すべての人々をお救い下さい。特に女人をお救い下さい」と述べると如来はうなずき、白毫をいれずに常行堂に安置したと伝承されています。
のちに神楽岡の地にこの阿弥陀像が移されたのは、戒算上人の夢の中に阿弥陀仏の化身である老僧が現れてこの地を勧めたからだとされ、全く同じ夢を神楽岡に離宮を設けていた東三條院(藤原詮子)が見ていて、女院も協力をして寺が創建されたと伝わっています。その後、東三條院の子である一条天皇の勅願寺となり、さらに念仏道場としても栄え、特に女人往生の寺として女性から厚い信仰を得るようになりました。
しかし、応仁の乱によって寺が打ち壊されて以後は寺地を転々とし、1519年にいったん旧地に戻るものの、秀吉の時代になると御所の北東に移され、ようやく元禄6(1693)年、東山天皇の勅により、再び旧地にもどり再建されました。現在、御苑の北東の門である石薬師御門の前付近に「真如堂前町」などの地名が残っているのはこのためです。
現在は、立派な本堂や三重塔の周囲を美しくカエデが彩る寺として知られ、秋の紅葉の頃には多くの人で賑わいます。ただ、4日の時点では紅葉は三重塔裏や門前でまだ見頃の一方、人はまばらでゆっくりと紅葉を楽しめました。有料拝観では、書院や涅槃の庭を見学できこちらもおすすめ。また、境内の諸堂も、善光寺如来や県井観音、新長谷寺に石薬師、穴の開いた鐘に、木喰正禅の阿弥陀露仏など、京都に詳しい方ほど興味深いものばかりだと感じると思います。ぜひ、ゆっくりと散策をしてみてください。
ガイドのご紹介
京都検定1級に4年連続最高得点で合格(第14回~第17回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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