5月31日まで「松花堂」が公開中!

21日に、八幡市にある松花堂庭園を訪れました。

松花堂庭園

松花堂庭園は、松花堂昭乗ゆかりのお庭です。近衛信尹(のぶただ)・本阿弥光悦と共に、寛永の三筆と評された書の名人で、書のみならず、茶道・作庭などにも通じた文人で、石清水八幡宮の社僧でもありました。昭乗は石川丈山・林羅山・小堀遠州・木下長嘯子らと交友があり、小堀遠州とも親戚に当たりました。「松花堂」とは、昭乗が晩年に構えた庵の名前で、元は石清水八幡宮のある男山山中にありました。

松花堂庭園

しかし、明治期の神仏分離に伴い、現在地に移転。昭和52年に八幡市(旧八幡町)の持ち物となった庭園は、2002年に美しく整備されて再オープンしました。男山の旧地には、石碑が立ち、松花堂跡は平坦地として今もありし日の雰囲気を残しているかのようです。男山山中にはこうした建物跡の平坦地が多く、改めて神仏分離運動の激しさを感じられる場所です。

松花堂

松花堂といえば「松花堂弁当」が知られますが、これは松花堂昭乗が作ったものではありません。昭和の初めに、「吉兆」の創業者である湯木貞一が、昭乗の使っていた物入れ(四つ切箱)を参考にし、試行錯誤のうえ懐石料理を盛り付け、弁当として世に広めたのが「松花堂弁当」の始まりです。十字に仕切られていることで、それぞれにご飯や煮物、焼き物などを区別して盛り分けられるようになっています。食材同士の匂いや水分が混ざらず、見栄えも美しい弁当として現在でも人気を博しています。松花堂庭園に隣接して、京都吉兆の松花堂店があり、「本場」で松花堂弁当を頂くこともできます。

松花堂弁当

現在の松花堂庭園は、内園と外園とに分かれています。外園は竹の美しい現代的な日本庭園です。カエデが植わり、多数の生け垣も目を引きます。茶室が外園だけでも3席あり、いずれも再現されたものですが、それぞれ松竹梅の名を冠した趣ある美しい茶室となっています。

松花堂庭園

内園は国の史跡にも指定されていて、東車塚古墳を取り込んだ面白いお庭。茶室の松花堂と泉坊書院も残されています。ただ、2018年の大阪府北部地震で建物が被害を受け、松花堂と書院が修復されています。ようやくこの春、修復が終わった松花堂が5月31日まで特別公開中。これまで見られなかった西側も見られ、ハート形の猪目窓が印象的でした。書院はまだ修復中で、今回立ち入れるのは松花堂までである点にご注意ください。

松花堂

松花堂は方形の茶室で江戸時代の寛永14年(1637年)の建造。京都府の文化財に指定されています。やはりひなびた感じがあって雰囲気のよい茶室です。ちなみに修復中の書院は桃山時代の様式を伝える建物で、元は男山山中の「泉坊」にあって小早川秀秋の寄進ともいわれ、玄関(車寄せ)は桃山上の遺構で秀吉の家紋もほどこされています。書院の主室には玉座があり、後陽成天皇や孝明天皇がしばしば行幸になり、玉座の間に坐して、日の出を眺めたそう。男山山中からの眺めはさぞ絶景だったことでしょう。

松花堂

園内は竹の美しさが際立ち、カエデの緑が美しく迎えてくれました。冬場は椿も充実しています。石清水八幡宮からは直線で約2.7㎞の距離。やや離れた場所にありますので、石清水八幡宮駅や樟葉駅からバスやタクシーでの移動もよいでしょう。開園は午前9時から午後4時30分が最終受付。毎週月曜日と年末年始が休園です。5月31日までは300円で、修復を終えた松花堂の特別公開が行われています。美術館との共通券もあります。この機会に足を延ばしていただくのもおすすめです。

松花堂

ガイドのご紹介

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京都検定1級に5年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。

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