10月8日の夜に、粟田神社で石見神楽(いわみかぐら)の奉納がありました。
10月の京都を代表するお祭りのひとつが粟田祭。神輿や剣鉾が出る神幸列は例年スポーツの日(今年は10日)に行われ、その前日の夜に世渡り神事が(今年は雨で中止)、前々日に神賑行事が行われて石見神楽が奉納されます。今年は8日夜に、京都芸術大学(旧・京都造形芸術大学)の学生さんらで構成された瓜生山(うりゅうやま)舞子連中による「石見神楽」の奉納が行われました。本場の島根県から指導者もこられているようで、遠く離れた京都で石見神楽の面白さを広めて下さっています。
「石見」とは、京都では「山城」や「丹波」のような島根県西部の古い国名で、「出雲」の西にある国です。石見神楽は、笛や太鼓の非常に軽快なリズムに乗って激しく踊りながら物語を進めて行くというもので、非常に見ごたえがありますので、一度見ると、はまってしまう方も多いでしょう。
最初の演目は「塩祓(しおはらい)」。この演目は「四方祓い」ともいわれるように、四方の神々をお集めし、舞座を清める儀式です。次の演目は「八幡(はちまん)」。かつて九州は豊前(ぶぜん)の国で、第六天魔王が人々に害をなしていましたが、宇佐八幡の神である八幡麻呂(やはたまろ)は、自ら出向いて神通の弓(じんつうのゆみ)と方便の矢(ほうべんのや)で退治をするという演目です。
さらに奉納された「恵比須」は、釣りが上手な神様として知られる恵比須様が鯛を釣り上げる場面を演じます。とても動きが大きく軽快で、楽しそうに演じていました。演技の途中では、お決まりの飴を撒く場面もあり、観客も喜んでいました。鯛が客席から出てくる演出もよいですね。
最後は、石見神楽の代表的な演目、大蛇(おろち)です。八岐大蛇とも言います。スサノオノミコトが出雲の国・斐伊川にさしかかると、嘆き悲しむ老夫婦と稲田姫に出会いました。理由を尋ねると、ヤマタノオロチが毎年現れて、既に七人の娘がさらわれ、残った稲田姫もやがてその大蛇にさらわれてしまうと言います。
一計を案じたスサノオは、種々の木の実で醸した毒酒を飲ませ、酔ったところを退治します。この演目では何といっても、大蛇の動きが注目です。まるで生きているかのような動きを見せたり、口から煙を吐きながら現れます。そして最後は、スバっと首を取られてしまうのです。
近年はコロナ禍で中止されていたこともあってか、今年は多くの方が境内に訪れていました。私も石見神楽の軽快なリズムと動きを久方ぶりに目にすることができました。粟田神社や瓜生山舞子連中の皆様に感謝いたします。石見神楽は他の神社で奉納されることもありますので、機会がありましたらぜひご覧になってみて下さい。また、動画を下記に載せますのでよければご覧ください。
ガイドのご紹介
京都検定1級に5年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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