10月22日に、鞍馬の火祭が行われました。今年は事前告知なくこれまで一般観光客の観覧場所であった御旅所から出されてしまうという、大変残念な対応となりました。
京都の数ある祭りや行事の中で、初心者の見学は最高難度といっても過言ではないのが鞍馬の火祭です。見ごたえのある勇壮な火祭りである一方、その混雑ぶりは京都の祭事でも群を抜いています(2022年は比較的空いていました)。10月22日は時代祭もあるため、両方を見ようとする観光客らで叡山電車の出町柳駅は大混雑。帰りも鞍馬駅からの電車に乗るために混雑が著しい時間帯もあります。現地も警察官が多数動員されて非常に物々しい雰囲気。道は狭く、思うようにはまず動けませんので、ストレスがたまる方も多いことでしょう。予め十分な覚悟と広い心を持って見に行って下さい。
鞍馬の火祭では、基本的には街道で立ち止まることは許されず、場所取りもできません。警官の誘導に沿って「道を歩き続ける」しかなく、その途中で運よく目の前を松明が通れば見られるというもの。運が悪いとひたすら混雑にもまれて何も見れずに帰ることになります。今年は混雑緩和のためか、鞍馬寺の山門下で神輿を下ろす行事は行われず、あらかじめ御旅所に神輿が安置されました。その関係もあるのかはわかりませんが、今年は御旅所では留まって松明がやってくる様子を目にすることができず、事前告知無く御旅所から出されてしまうという大変残念な状況でした。
例年は御旅所では20時にやってくる松明の見学ができたのですが、警察官もそのことがよくわかっておられなかったようで、鞍馬の火祭のDVDを御旅所内で上映しているにもかかわらず対応がチグハグでした。DVDは御旅所に入って見てもらうために上映しているのではないでしょうか(最終的には交渉の末、松明が来る20分前までは御旅所にいることは可となりました)。
また今年から御旅所での見学ができないというのが予め決まっていたのでしたら、警察、鞍馬の地元からの「御旅所では松明の見学不可」という情報発信を事前にしていただきたかったです。御旅所には見学不可の旨の掲示は無く、例年見られた場所であれば、そこで待つ人がいるのは当然です。もっと丁寧な事前の情報発信や現地での掲示をお願いしたいというのが、観光客として見る方の気持ちでした。来年以降もこのまま御旅所が見学不可となるかもしれませんので、十分にご注意ください。
ただ、今年は幸いにも街道の混雑が比較的空いていて、一方通行の歩行規制も緩かったこともあり、大きな混乱は無かったようには思います。来年以降も今年のように空いているとは限りませんが、鞍馬の火祭は見るのが大変な行事ですので、見に行かれる方は時間的も体力的にも精神的にも、十分な余裕を持って足を延ばしてみてください。見られるかどうかは「運」も必要なお祭りです。なお、私が今回掲載している写真や動画は、警官から「注意を受けていない」場所で撮影したものです。
さて、鞍馬の火祭は「由岐(ゆき)神社」の祭礼。平安時代の中ごろ朱雀天皇の折、世が乱れ、反乱や大地震などの天変地異が次々に起こりました。そうした災いを鎮めるために、御所内に祀られていた神様を御所から見て北(鬼門)の方向にある鞍馬の地にお祀りすることになります。宮中から遷す際には鴨川の葦で松明を作り、道中にはかがり火をたいて照らし、鞍馬へとお迎えしたと伝わります。神が現れる時間帯は夜の暗闇が基本で、現在の鞍馬の火祭はこの神迎えの行列を再現する意味合いを持って、夜に行われます。
18時になると「神事(じんじ)ぶれ」と呼ばれる少年が「神事にまいらっしゃ~れ~」との掛け声で街道を進み、家々の前の松明に火が入って、神事が始まります。やがて子どもたちの松明が街道を行き交います。松明は子どもたちの「とっくり」と呼ばれる小さなサイズから大人が担ぐ100㎏クラスの大松明(甲斐性松明)まで、だんだんと大きくなっていきます。「さいれいや さいりょう(祭礼や最良または祭礼や祭礼)」の掛け声も響き渡り、お祭りの雰囲気が高まって行きます。
やがて20時になると剣鉾や鉦の音色とともに大松明が御旅所に進んできます。大松明は御旅所の中で何本も立てられ、祭りの盛り上がりが最高潮に達します。近くだと炎の熱も大いに感じられるでしょう。独特の雰囲気の中でしめ縄が切られます。今年はあらかじめ神輿が置かれた中でのしめ縄切りとなりました。
しめ縄切りが終わると、大松明らはさらに北にある鞍馬寺の山門下へと進んでいきます。今年は私は都合により、ここまでで帰らせて頂きました。この頃の鞍馬駅は大変混雑し、電車に乗れるまで時間がかかりますのでご注意ください。まだ火祭を見る方は山門下の混雑を覚悟する必要があります。今年は3年ぶりに開催された鞍馬の火祭。御旅所での対応には苦言を呈しましたが、地元の方や警備の警察を含め、遅くまで見学された皆様もお疲れ様でした。何はともあれお祭りが開催されたことに心から感謝いたします。
ガイドのご紹介
京都検定1級に5年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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