4日まで建仁寺の正伝永源院が特別公開されていました。

正伝永源院は普段は非公開の寺院で、場所は建仁寺の北にあります。元は正伝院と永源庵の二つの寺でした。正伝院は鎌倉時代に創建後、荒廃しましたが、信長の弟である織田有楽斎(うらくさい)が再興し、茶室・如庵を創建。有楽斎は正伝院で天寿を全う、墓も残されています。

茶室・如庵は有楽斎の代表的な茶室で国宝。現在は愛知県の犬山に移築されています。実は、明治初期の廃仏毀釈の折り、正伝院の土地は上げ地となり、建物は売却の上、そのお金の寄付を強要され、如庵は一般に払い下げられてしまったのです。やがて明治41年に三井家の手に渡り、最終的には昭和47年に犬山の現在地に移されています。

現在の正伝永源院には、如庵を忠実に模した茶室があります。平成8年に完成したもので、「如庵」の額は細川護貞氏の揮毫。実は、永源庵のほうが細川氏の代々の菩提寺で、廃仏毀釈の際に永源庵が廃寺となり、その土地に正伝院が移ってきた後、時の侯爵である細川家の由緒により名前だけが正伝永源院として残されることになりました。苦難の歴史を持つお寺です。

本堂(方丈)には有楽斎の像もあり、拝ませて頂くことができます。そして、部屋には細川護煕氏が絵を描いた襖がはまっています。春の公開と秋の公開とでは襖絵が変わり、秋の公開では秋と冬の絵が公開されていました。

2021年秋には、有楽斎の茶の湯の師である千利休のさらに師である武野紹鴎の供養塔が庭園に安置されました。紹鴎の25回忌に当たる天正7(1579)年に、娘婿で弟子の今井宗久が大阪・堺の寺に建立したもので、有楽斎が正伝院の境内に移した記録が残るそう。

塔は大正5(1916)年に藤田家が入手し、邸宅跡の太閤園に置かれていましたが、藤田観光が太閤園を手放したのをきっかけに、約100年ぶりにゆかりの京都へと戻ってきました。有楽斎はこの紹鴎の塔をモデルに自身の墓を建てたそうで、確かにデザインはよく似ています。紹鴎の供養塔はやや斜めに据えられていますが、これは本堂内の有楽斎の木像の目線の先に来るように置かれたことが理由とのこと。ぜひ、供養塔にも注目をしてみて下さい。

庭園は4日の公開最終日もまだ紅葉が美しく、室内からも額縁のように望むことができました。今年の公開は終わりましたが、例年春にも公開がありますので、機会がありましたら訪れてみて下さい。
ガイドのご紹介

京都検定1級に5年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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