5月28日に嵯峨祭の還幸祭が行われました。
愛宕(あたご)神社と野宮(ののみや)神社の神輿が巡行する大きなお祭りが嵯峨祭です。室町時代末期(戦国時代)の公家の日記にも見物の記録が残り、鎌倉時代にはあったとされていますが、由来については不明な点も多く、平安時代に起源を持つとする説も出されています。清凉寺の門前に御旅所があり、大覚寺の境内にも立ち寄るという、複雑な背景を秘めたお祭りです。
還幸祭の見どころのひとつは澄んだ音を響かせる剣鉾。剣鉾はその鈴(りん)の音や、輝き尖った剣先で災厄をもたらす疫神(えきじん)を集め、神輿が巡行する道々を清めて行くものです。京都の東山などの剣鉾では、前後に歩く動作で上下に振りながら鳴らして行きますが、嵯峨祭の剣鉾は左右のひねりによって、鈴(りん)をグルグルと巻きつけるように回して音を響かせるのが特徴です。動画もありますので、ぜひご覧ください。
上を一切見ないところも東の差し方との大きな違いです。鉾自体は数十キロの重さがあり、持つだけでも大変なもの。差すには熟練の技を要します。見事な足腰の筋肉をした男性たちが音を響かせて歩いて行く様子は、感動すら覚えるほどです。今年は4年ぶりの開催とあってか剣鉾が傾く危険な場面もありましたが、澄んだ音色を一帯に響かせて進んでいきました。
嵯峨祭に登場する二つの神社のお神輿は2010年に解体修理をされて、美しく輝いています。還幸祭の一週間前の神幸祭で清凉寺前にある御旅所に祀られ、この日は大覚寺から嵯峨野一帯を巡行していきます。お昼前には大覚寺に到着して神仏が入り混じった儀式を行い、その後は嵐山方面へと進みます。
今年は復興初年度とあって例年と違う部分もあったようですが、私は渡月橋を神輿が渡っていき、中之島に入る場面を目にすることができました。遠くには愛宕山も見え、愛宕神社のお神輿を愛宕山を背景に眺められる場所です。
今年は予定された時間よりはかなり遅い進行となりつつも、勇壮な神輿振りと剣鉾の妙技を見ることができた嵯峨祭。久しぶりに目にできたことに感謝いたします。関係者の皆様もお疲れ様でした。
ガイドのご紹介
京都検定1級に6年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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