いにしえを偲ぶ広沢池の観月

9月29日は中秋の名月で満月でした。広沢池へと足を運んで、いにしえを偲びつつ月見を楽しみました。

広沢池の観月

広沢池は平安の昔から観月の名所としてしられ、和歌などにも度々詠まれてきました。現在も付近は風致地区として景観が保全されていて、都市部のすぐ近くでありながら、たいへん長閑な田園風景が広がっている貴重なエリアです。池のそばには清凉寺方面へのが通って交通量は多めですが、池越しの眺めは古くから変わっていないのでは思わせてくれます。

広沢池に昇る月

9月29日は快晴の空が広がり、満月とも重なった中秋の名月が大きな姿を見せると、ゆっくりと昇るにつれて、池には一筋の光が伸びて大変幻想的な眺めでした。個人的には広沢池の観月が大好きで、中秋の名月の前後には、過去何度も訪れています。賑わしさとは無縁で、多少の人はいてもとても静かに眺めることができ、日や時間によっては、自分だけの貸切で素晴らしい月を楽しむこともできる場所だからです。

広沢池に昇る月

そして、いにしえの人と同じような感覚を追体験できるのも広沢池の魅力。「古(いにしえ)の 人は汀に影絶えて 月のみ澄める 広沢の池」と詠んだのは平安末期に活躍をした源頼政。平家政権の中で最終的に三位という高い位まで昇った人物だったところから「源三位(げんざんみ)」と呼ばれ、若き日の鵺(ぬえ)退治の伝説や、以仁王の求めに応じて挙兵をし最後は平家と敵対したことなどでも知られています。

広沢池の観月

武芸に秀でた一方で、歌人としても優れた才能を発揮し、現代人でも唸るほどの秀逸な和歌を数々残しています。広沢池には平安中期には大きな伽藍を誇った遍照寺がありましたが、頼政のいた平安後期には衰えて荒廃していました。頼政から見て「古の人」は、遍照寺の僧侶なのか、寺で観月に興じた貴族たちなのか、想像が広がります。

広沢池の観月

他にも西行法師や慈鎮(慈円)和尚、後鳥羽上皇や藤原為家などが和歌を詠み、遍照寺が荒廃して以後も月の名所であり続けました。江戸時代の名所案内にも観月の名所として載り、池の際には茶店もあって折々の風景を楽しんだようです。

広沢池の観月

もうひとつ広沢池の月にまつわる句として、松尾芭蕉の句「名月や池をめぐりて夜もすがら」が紹介されることがあります。広沢池にひっそりと建つ石碑にも刻まれている名句で、広沢池のイメージにもピッタリですが、実際は深川の芭蕉庵での情景を詠んだものだそう。いずれにしても、広沢池の観月は時代を越えて愛されて来たということでしょう。広沢池で月を眺めるとき、源頼政の歌と芭蕉の句はいつも頭に思い浮かびます。今年もよい月を眺めることができました。

ガイドのご紹介

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京都検定1級に6年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。

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