宸殿が再建された曼殊院

先日、洛北の曼殊院を訪れました。5月13日からは黄不動明王像の公開も始まります。

曼殊院

曼殊院は、天台宗の門跡寺院で、五箇室(ごかしつ)門跡のひとつに数えられます。他の4つは、青蓮院、三千院、妙法院、毘沙門堂です。創建は、最澄が比叡山に建立した一堂に始まり、明暦2(1656)年、良尚法親王のときに現在地に移り、建物や庭園が整備されました。明治初期までは北野天満宮の管理職(別当)も兼務していた関連で、門前には天満宮も祀られています。

曼殊院

良尚法親王は、桂離宮を整備した八条宮智仁親王の子で、兄は智忠親王です。良尚法親王も芸術面で秀でた方であったため、曼殊院に残る書院には、桂離宮とも共通する部分があるのが特徴。瓢箪の形をした引手や富士山形の釘隠し、表裏の菊の彫刻がほどこされた欄間など、細部にまでこだわりを持って造られています。良尚法親王自身も書や絵を残しており、そのセンスの高さには感嘆させられます。

曼殊院

書院が面する深山と海洋を表現した庭園は趣があり、据えられたフクロウに似た彫刻があしらわれた手水鉢も名高いです。4月下旬にはキリシマツツジも綺麗で、今の時期は緑の美しさが印象的。晩秋の紅葉も見事です。寺宝や襖絵も貴重なものが多く伝わっています。境内は基本的には静かに楽しめるのも特徴です。

曼殊院

昨年に再建された新しい建物が「宸殿(しんでん)」です。明治の初めまでは宸殿があり、本堂として使用されていましたが、明治5年、京都府療病院(現・京都府立医科大学付属病院)の建設に際し、建物が寄付されて失われました。悲願ともいうべき再建された宸殿の姿には感動を覚えます。

曼殊院

これまで大書院にお祀りされていた本尊の阿弥陀如来像や、北野天満宮から移された十一面観音像、元三大師像などが宸殿に移され、本堂として使用されています。宸殿前に整備された庭園は「盲亀浮木(もうきふぼく)之庭」と名付けられた枯山水で、100年に1度、息継ぎのために水面から顔を出すという亀が、たまたま流れて来た穴の開いた浮き木(流木)に頭がすっぽりとハマるというお話をもとにし、非常に低い確率をイメージさせることで、人間に生まれることや仏教と出会ったことの奇跡、難しさを説いています。

曼殊院

5月13日から6月末までは、宸殿の再建を記念して国宝の黄不動明王画像の公開が行われます。平安時代の貴重な仏画で、三井寺にある像を写した、特徴ある不動明王像です。今後は秘仏になるとのことで、直接目にできるのは大変貴重な機会となりそうです。京都旅屋でも5月23日に散策で訪れる予定です。曼殊院の見どころも解説しますので、よろしければお気軽にご参加ください。

曼殊院

ガイドのご紹介

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京都検定1級に6年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。

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