5月12日に下鴨神社の神迎えの神事、御蔭祭(みかげまつり)が行われました。
告知が直前になってしまいましたが、14日21時~KBS京都で、15日20時~BS11で放送予定の「京都浪漫」に出演をさせていただきます。伏見稲荷大社のお山めぐりをご案内させていただきました。KBS京都のページはこちらから、BS11のページはこちらからご確認いただけます。第4週に再放送もある予定です。
12日に行われた下鴨神社の重要神事が御蔭祭です。下鴨神社や上賀茂神社は毎年新しいご神霊・荒御霊をお迎えして社殿の神の力と合わせることによって、神の力を強めています。また田植えの時期である今の時期に新たな神に神饌を献じておもてなしをし、五穀豊穣を祈願する意味合いもあるそう。葵祭の発祥は、賀茂の神の祟りによって引き起こされたという風水害による凶作を鎮めたことにあり、15日の路頭の儀は朝廷から賀茂神へと御幣物(ごへいもつ:ささげもの)を届け、風水害が起こらず五穀の実りが無事にもたらされることを祈願するのが目的です。
下鴨神社の神が降り立つ(お生まれになる)のは、高野川をさかのぼった比叡山の麓にある御蔭山(御生山:みあれやま)に建つ御蔭神社。普段はほとんど人影のない神社です。賀茂の神は祟ると風水害を起こすとも考えられた水の神でもあり、上賀茂神社は賀茂川にそった神山(こうやま)に、下鴨神社は高野川にそって神の降臨地を持っています。
さて、下鴨神社の御蔭祭では、午前9時から神事のあと一行は神宝や祭具を持ち列を整えて、楼門の前から鳥居を抜けて出発していきます。ただ、御蔭神社まで歩くのではなく、すぐに用意されているマイクロバスに乗り込んで御蔭神社へと移動をしていきます。こうして昼の12時に神迎えの神事が行われて新たな神が迎えられるのです。
その後、一行は再び車で移動をして、赤の宮神社(賀茂波爾神社)を経たあと、茶ノ木原公園から徒歩での巡行で下鴨神社へと向かってきます。神は神輿ではなく馬の背に乗り換えて移動をし、この形式が最も古い神幸列だとも言われています。馬の背に乗った神霊は糺の森の中ほどにある、参道が少し広くなっている場所「切芝」において、糺の森に宿る神々の精霊とともに東遊(あずまあそび)をご覧になります。これが切芝神事で、御蔭祭のハイライトでもあります。
今年は4年ぶりの行列(行粧)が伴い、例年よりはペースが遅めとなりましたが、特に子どもたちの笑顔が印象的でした。無事に下鴨神社に一行が到着された光景には安堵の気持ちさえ覚えます。
その後の切芝神事では、東遊(あずまあそび)の優雅な舞の風情を感じることができました。東遊とは、東国に由来を持つ歌や舞のことで、平安時代から賀茂祭で舞われるようになりました。枕草子にも清少納言が好きな舞として、東遊の駿河舞・求子(もとご・もとめご)舞が登場します。まさにこの切芝神事で見られるのは、駿河舞と求子舞で、平安時代に清少納言が感じた世界を私たちも時代を超えて感じることができます。
神馬にお乗りになった神は、馬の目を通して舞をご覧になりますが、馬が顔だけを出して舞を見るさまは可愛らしくもあります。舞が馬に向かって奉納されるのも特徴です。切芝神事が終わると、行列はさらに境内の奥へと進み、鳥居をくぐると「おぉ~」という警蹕(けいひつ:周囲に神の降臨を告げて注意を促し敬礼を呼び掛ける、おぉぉ~という声)が響いたのも印象的。神馬も神職が綱を引いていきます。
そして拝殿へと入る門を神馬らがくぐり、門が閉じられます。しばらくすると神馬が終えて出てきます。門の奥では神事が行われ、新たに迎えられた荒御霊(あらみたま)と社殿に祀られた和御霊(にぎみたま)が合わさります。こうして力が強まった賀茂の神。15日(雨の場合は16日)の路頭の儀も無事に行われればと思います。
ガイドのご紹介
京都検定1級に6年連続最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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